
ABS樹脂切削加工|内径・溝・穴あけ旋盤+マシニング複合
- プラスチック加工品例 -
ABS樹脂切削加工|内径・溝・穴あけ旋盤+マシニング複合
ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン)の旋盤・マシニング複合切削加工事例として、汎用旋盤と3軸マシニングセンターを用い、外径φ64mm×全長96mmの円筒形部品に内径くり抜き・外周溝・貫通穴あけを施した工程と加工ポイントを解説します。
この記事の要点
- 黒ABS樹脂丸棒から外径φ64mm×全長96mmの円筒形部品を、旋盤とマシニングセンターの複合加工で製作した事例を紹介します。
- 外径段付き・内径φ43mm×深さ92.5mmのくり抜き・幅3mm溝・φ3.2貫通穴4箇所という複数の加工要素を1部品に集約した工程設計のポイントを解説します。
- ABS樹脂の切削加工における切削熱管理・工具選定・クランプ方法など、加工精度を左右する注意点をまとめています。
- GFRP・PP・POMとの素材比較表および主要物性値テーブルにより、ABS樹脂の特性と適用範囲を確認できます。
- 小ロット対応の加工フローや納期目安、よくあるトラブルと当社の対策を12項目のFAQで解説しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 素材 | ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン)・黒色 |
| 外形寸法 | 外径φ64mm×全長96mm |
| 加工内容 | 外径段付き加工・内径くり抜き・外周溝加工・端面穴あけ |
| 加工設備 | 汎用旋盤・3軸マシニングセンター |
| 切削工具 | バイト・フラットエンドミル・ドリル |
| 仕上げ | バリ取り・糸面取り(手作業) |
| 図面支給方法 | PDFデータ(メール支給) |
※ 本仕様は掲載事例の実績に基づきます。ご発注内容によって仕様は異なります。
ABS樹脂精密部品の加工内容と加工方法
工程設計の要点
- 図面データ(PDF)を解析し、工作機械選定・工具選定・加工プログラムを作成する
- ABS樹脂丸棒を所定の長さに切り出し、旋盤チャックにセットする
- 旋盤で外径φ64mm×全長96mmに仕上げ、片端から3.5mm残してφ50mmに段付き外径加工を行う
- 引き続き旋盤で外径φ64側から内径φ43mm×深さ92.5mmを段階的にくり抜く
- マシニングセンターに段取りし直し、外径φ64側の端部に幅3mm・奥R4(φ8)の溝を加工する
- マシニングセンターで同端面にφ3.2の貫通丸穴を4箇所穿孔する
- バリ取りと糸面取りを手作業で丁寧に施し、切削面の品質を確保する
- 全数の寸法検査後、緩衝材で梱包し宅配便で出荷する
切削加工で注意すべきポイント
- 切削熱管理:ABS樹脂は熱変形温度が比較的低いため、切削速度と送り量を適正化し、圧縮エアで切削点を冷却して溶融・変形を防止する
- 工具の切れ味:鋭利なバイト・エンドミルを選定し、工具摩耗による表面のむしれや光沢ムラを防ぐ
- クランプ圧の均一化:均一な締め付けで把持することで、薄肉部の変形や内径真円度の低下を防止する
- 切屑処理:ABS樹脂は切屑が長くなりやすいため、適切な切り込み量と送り速度の組み合わせでチップ詰まりを防ぐ
- 内径の剛性確保:深穴の内径加工はボーリングバーの剛性を確保しつつ段階的な切り込みで真円度を維持する
- バリ取り・糸面取り:ABS樹脂は靭性がありバリが生じやすいため、仕上げ工程での手作業バリ取りと糸面取りが品質確保の要となる
電話での問い合わせは 0553-33-6927 まで
本製品で使用したABS樹脂について
本製品には黒色のABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン)を使用しています。当社で用意した黒ABS樹脂丸棒を切り出し、旋盤・マシニングセンターで加工しています。
ABS樹脂には汎用・耐衝撃・難燃・めっきグレードなど用途に応じた品種があり、支給品がどのグレードであっても追加工に対応しています。グレード選定でお迷いの場合はお気軽にご相談ください。
ABS樹脂の特性と優位性
- 切削加工性に優れ、旋盤・マシニングセンターによる複雑形状の加工コストを抑えやすい
- 密度約1.04 g/cm3と軽量で、装置・機器の部品軽量化に貢献する
- 寸法安定性が良好で、内径・穴位置などの精密加工における再現性に優れる
- 表面が滑らかに仕上がり、外観部品としての美観に優れ、塗装・めっきとの相性も良い
- 強度・剛性・靭性のバランスが良く、幅広い産業用途に対応できる汎用性の高い素材
ABS樹脂の主要物性値
| 物性項目 | 単位 | 値 | 試験規格 |
|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm3 | 1.04 | ISO 1183 |
| 引張強度 | MPa | 44 | ISO 527 |
| 引張弾性率 | MPa | 2,200 | ISO 527 |
| 曲げ強度 | MPa | 70 | ISO 178 |
| 曲げ弾性率 | MPa | 2,300 | ISO 178 |
| シャルピー衝撃強度(ノッチあり) | kJ/m2 | 15 | ISO 179 |
| 熱変形温度(0.45 MPa) | ℃ | 95 | ISO 75 |
| 熱変形温度(1.82 MPa) | ℃ | 80 | ISO 75 |
| 線膨張係数 | ×10-6/K | 80 | ISO 11359 |
| 吸水率(23℃・24h) | % | 0.3 | ISO 62 |
| 体積抵抗率 | Ω·cm | 1015 | IEC 60093 |
※ 物性値は汎用グレードの代表値です。グレード・製品ロットにより異なる場合があります。
他素材との比較
| 比較項目 | ABS樹脂 | GFRP | PP | POM | A5052 | SUS304 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ★ 本素材 | 他の樹脂素材 | 金属素材 | ||||
| 切削加工性 | ◎ | △ | ○ | ◎ | ○ | △ |
| 密度(g/cm3) | 1.04 | 1.90 | 0.91 | 1.41 | 2.68 | 7.93 |
| 引張強度(MPa) | 44 | 300 | 33 | 68 | 255 | 520 |
| 熱変形温度(℃・1.82 MPa) | 80 | 130 | 55 | 100 | – | – |
| 吸水率(%・24h) | 0.3 | 0.1 | <0.01 | 0.2 | – | – |
| 耐薬品性 | ○ | ◎ | ◎ | ○ | △ | ○ |
| コスト指数(加工) | ○ | × | ◎ | ○ | △ | × |
| 汎用性 | ◎ | △ | ○ | ◎ | ○ | ○ | 加工事例 | ABS樹脂加工事例 | GFRP加工事例 | PP加工事例 | POM加工事例 | – | – |
※ 物性値は代表値。実使用条件によって異なります。金属素材の熱変形温度・吸水率は樹脂と評価基準が異なるため「-」としています。
凡例:◎優秀・○良好・△やや劣る・×不適
ABS樹脂を選ぶべきケース・再検討すべきケース
| この素材が向いているケース | 他素材も検討すべきケース |
|---|---|
| 外観を重視する部品(塗装・めっき後処理を含む筐体・カバー類) | 80℃以上の高温環境での継続使用 |
| 装置・機器の軽量化が求められる内部部品 | 薬品・溶剤との接触が頻繁な環境(耐薬品性が必要な場合はPP・POM等を検討) |
| 試作・小ロット品で加工コストを抑えたい場合 | 高い摺動性・自己潤滑性が必要な摺動部品(POM・PTFEを検討) |
| 旋盤+マシニングの複合加工が必要な複雑形状部品 | 長期屋外使用・紫外線暴露環境(UV安定剤入りグレードまたはASA・PP等を検討) |
| 適度な剛性と衝撃強度のバランスが必要な構造部品 | 高い寸法精度を長期間維持する必要がある精密摺動部品 |
※ 素材選定に迷う場合はご相談ください。用途・環境・コストを総合的に判断してご提案します。
ABS樹脂の長所・短所
| 長所 | 短所 |
|---|---|
| 切削加工性が良好で、複雑形状でも加工コストを抑えやすい | 耐熱性が低く、80℃以上の高温環境には不向き |
| 軽量(密度1.04 g/cm3)で、部品の軽量化に貢献する | 耐薬品性がPP・POM等に比べてやや劣る |
| 寸法安定性に優れ、精密な穴・内径の再現精度が高い | 屋外長期使用ではUV劣化に注意が必要 |
| 表面仕上げが美しく、塗装・めっきとの親和性が高い | 吸水による寸法変化(0.3%/24h)があるため高湿環境では注意 |
| 強度・剛性・靭性のバランスが良く幅広い用途に対応できる | 摺動性はPOM・PTFEに及ばないため摺動部には不向き |
よくあるトラブルと当社の対策
| トラブル | 主な原因 | 当社の対策 |
|---|---|---|
| 切削熱による変形・溶融 | 高速・大切込みによる摩擦熱の蓄積 | 切削速度と送り量を適正化し、圧縮エアで切削点を冷却 |
| 表面のむしれ・光沢ムラ | 工具摩耗や不適切なすくい角による引きずり | 鋭利な刃先・適切なすくい角の工具を使用し、刃先状態を定期確認 |
| バリの発生 | ABS樹脂の靭性による切削残り | 適切な切削条件の設定と、手作業による丁寧なバリ取り・糸面取り |
| 薄肉部の振動(ビビリ) | 剛性不足による共振 | ワーク固定治具の最適化と切削条件(回転数・送り)の調整 |
| 内径の真円度低下 | チャッキング時の過大なクランプ圧による変形 | 均一な締め付け管理と段階的な切り込みで真円度を確保 |
上記以外のトラブルや特殊な加工要件についても、まずはご相談ください。図面を確認のうえ対応方法をご提案します。
加工が活躍する分野
- 試作・開発分野:試作1個〜小ロット生産に対応。設計段階の形状確認・機能評価用部品の製作
- 電気・電子機器分野:筐体・カバー・ブラケットなど、外観品質と加工精度を両立する部品
- 産業機械・検査装置分野:治具・ホルダー・センサーハウジングなど機械内部の補助部品
- 自動車・輸送機器分野:内装補助部品や試作部品など、軽量かつ形状自由度の高い部品
よくある質問(FAQ)
Q1. ABS樹脂の切削加工は1個から対応できますか?
A1. はい、試作1個から小ロット生産まで対応しています。まずはお気軽にお問い合わせください。
Q2. 図面はどの形式で支給すればよいですか?
A2. PDF図面での支給が最も一般的です。DXF・STP(STEP)などのデータも受け付けています。
Q3. 内径加工の精度はどのくらいまで対応できますか?
A3. 加工内容や寸法によりますが、一般的な公差±0.05mm程度の内径加工に対応しています。精度要件はご相談ください。
Q4. ABS樹脂の切削加工で割れや欠けは生じやすいですか?
A4. ABS樹脂は靭性があり割れにくい素材です。ただし薄肉部や鋭角エッジは加工条件の調整が必要です。
Q5. 黒色以外のABS樹脂も加工できますか?
A5. はい、白色(ナチュラル色)のABS樹脂も加工対応しています。使用素材についてはご相談ください。
Q6. 溝加工の幅や深さに制限はありますか?
A6. 使用工具のサイズにより制限があります。本事例では幅3mm・奥R4の溝加工を施しており、同等の加工に対応しています。
Q7. 穴あけ加工の位置精度はどのくらいですか?
A7. 3軸マシニングセンターを使用するため、位置精度±0.05mm程度の穴あけ加工が可能です。
Q8. 納期はどのくらいかかりますか?
A8. 加工内容や数量により異なりますが、標準的な部品で5〜7日程度です。急ぎの場合はご相談ください。
Q9. ABS樹脂とPOMではどちらが切削加工に向いていますか?
A9. どちらも切削加工性は良好ですが、ABS樹脂は外観仕上げに優れ、POMは摺動性・耐薬品性が高いという違いがあります。
Q10. 塗装やめっき処理との組み合わせは可能ですか?
A10. 切削加工後の塗装・めっき処理は協力業者を通じて対応できます。詳しくはお問い合わせください。
Q11. 支給材(お客様からの素材持ち込み)での追加工は対応していますか?
A11. はい、支給材への追加工にも対応しています。素材のグレードや状態をあらかじめお知らせください。
Q12. 旋盤とマシニング複合加工の見積もりはどのように算出しますか?
A12. 図面をもとに加工工程・使用機械・加工時間・材料費を積算してご提示します。まずは図面データをお送りください。
ご依頼から納品までの流れ
- メールまたはお電話でお問い合わせいただき、図面データ(PDF等)をご支給ください
- 図面内容を確認のうえ、加工費・材料費・納期を含む見積もりをご提示します
- ご承認後、素材を調達し加工プログラムを作成します
- 旋盤・マシニングセンターで切削加工を実施し、バリ取り・寸法検査を行います
- 緩衝材で梱包のうえ、宅配便にてご指定先へ出荷します
まとめ
本ページでは、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン)を使った旋盤・マシニング複合切削加工の事例をご紹介しました。外径段付き・内径くり抜き・溝・穴あけという複数の加工要素を1部品に集約しており、複合加工の対応力をご確認いただけます。ABS樹脂の切削加工について、素材選定・形状・数量など、どんなことでもお気軽にお問い合わせください。試作1個からご対応しています。
電話での問い合わせは 0553-33-6927 まで
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