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MC703HL切削加工|1mm薄板・V溝・貫通穴の精密加工

- プラスチック加工品例 -

MC703HL切削加工|1mm薄板・V溝・貫通穴の精密加工

MC703HL(MCナイロン摺動グレード)切削加工事例です。3軸マシニングセンターで規格最薄の5t板から縦8mm×横11mm×厚さ1mm90°V溝・貫通穴付き薄板部品を製作した加工内容を解説します。

この記事の要点

  1. MC703HL(MCナイロン摺動グレード)の5t板から厚さ1mmへ削り出し、90°V溝貫通穴φ2.2×2箇所を複合加工した小ロット事例を紹介しています。
  2. 3軸マシニングセンターでの加工工程と、薄板・V溝加工における固定・切削熱・チップ排出の注意ポイントを解説しています。
  3. 主要物性値(動摩擦係数0.15-0.20・耐摩耗性は標準MCナイロンの2〜3倍)と、MC900NC・MC801・MC602ST・金属素材との比較表を掲載しています。
  4. 素材選定ガイド・長所と短所・よくあるトラブルと対策を表形式でまとめています。
  5. 試作1個から対応可能。MC703HLの薄板・V溝加工についてのご相談はお気軽にお問い合わせください。用途別の加工事例もあわせてご覧いただけます。
MC703HL(MCナイロン摺動グレード)の1mm薄板切削加工品10個。縦8mm×横11mm×厚さ1mm、90°V溝と貫通穴φ2.2×2箇所。斜め上から全体を撮影。
MC703HL(MCナイロン摺動グレード)の精密切削加工品10個。外形寸法縦8mm×横11mm×厚さ1mmの薄板形状に、90°V溝貫通穴φ2.2×2箇所を3軸マシニングセンターで加工。規格最薄の5t板から1mmへ削り出した高難度の小ロット加工品。
MC703HL切削加工品10個のクローズアップ。1mm薄板に90°V溝と貫通穴φ2.2×2箇所を加工。MCナイロン摺動グレード特有の紫色。低角度で撮影。
同加工品10個を低角度・クローズアップで撮影。MC703HL特有の濃い紫色と、90°V溝貫通穴φ2.2の加工形状が確認できる。厚さ1mmの薄板への複合加工を実現した精密部品。
表1:MC703HL切削加工品 代表仕様
項目内容
素材MC703HL(MCナイロン摺動グレード)
外形寸法縦8mm × 横11mm × 厚さ1mm
加工内容板厚フライス加工(5t → 1mm削り出し)・90°V溝加工・貫通穴φ2.2×2箇所
加工設備3軸マシニングセンター
使用工具フルバックカッター・フラットエンドミル・ドリル
仕上げバリ取り・糸面取り処理済み
対応ロット1個から対応

※ 寸法・仕様はお客様支給図面に基づいて製作しています。詳細はお問い合わせください。

当社の加工実績:掲載加工事例543件(2026年5月現在)。MC703HLを含む樹脂素材の小ロット加工を多数手がけており、試作1個からご対応しています。

MC703HL精密部品の加工内容と加工方法

5t板から1mm薄板へ削り出す高難度加工

本事例では、規格最薄が5tのMC703HL板材から、厚さ1mmまでフライス加工で削り出しています。樹脂特有の切削熱による変形薄板の反りを抑えながら、90°V溝小径穴を高精度に加工する必要があり、加工条件と治具設計の最適化が重要となる高難度加工です。

加工工程

  1. 図面確認と加工プログラム作成 – お客様支給のPDF図面をもとに、工具選定・加工順序・座標系を決定する
  2. 素材の準備と固定 – MC703HL板材を必要サイズに切り出し、マシニングセンターのバイスに確実に固定する
  3. フライス加工(板厚削り出し) – フルバックカッターで板厚を5mm → 1mmに仕上げる。規格最薄が5tのため、全厚みをフライスで削り出す
  4. 外形・V溝のエンドミル加工 – フラットエンドミルで外形を縦8mm×横11mmに仕上げ、片側に90°V溝を切削する
  5. ドリル加工貫通穴φ2.2を2箇所、位置精度を確保してドリル加工する
  6. バリ取り・糸面取り – 切削面のバリを除去し、エッジに糸面取りを施して安全性と品質を確保する
  7. 寸法検査 – マイクロメーター・測定器にて全寸法を確認する
  8. 梱包・出荷 – 緩衝材で保護し、指定の方法で出荷する

マシニング加工で注意すべきポイント

  • 薄板固定の工夫 – 厚さ1mmという極薄形状では、固定治具の締め付け力による変形・反りを防ぐため、均一なクランプ圧と適切な治具設計が必要です
  • 切削熱の管理切削熱の蓄積で素材が軟化・変形するリスクがあります。適切なエアブローと切削条件(周速100〜300m/min)で発熱を抑制します
  • V溝の精度確保 – 90°V溝はエンドミルの工具選定と送り速度の最適化が仕上がり精度に直結します。鋭利な工具を使用します
  • 小径穴の位置精度 – φ2.2の小径ドリルは偏芯しやすいため、ショートドリルや中心もみによる位置決めを行います
  • チップ排出の確保 – 樹脂の切りくずが巻き付くと品質低下の原因になります。エアブローで確実に排出します
  • 吸水変形への配慮 – MCナイロンは吸水による寸法変化があるため、加工後の保管環境にも注意が必要です
この部品の加工について相談する

電話でのお問い合わせは 0553-33-6927 まで

本製品で使用したMC703HLについて

MC703HLは、MCナイロン(モノマーキャストナイロン)に特殊潤滑油を含浸させた自己潤滑グレードのエンジニアリングプラスチックです。濃い紫色が識別色で、給油が困難な摺動部品に特化した素材として産業機械・食品機械・繊維機械などで広く使われています。MCナイロンシリーズには、基本・摺動・耐候・高強度・帯電防止など用途に応じた多様な品種があります。詳細な加工事例は摺動MCナイロン加工事例一覧もあわせてご参照ください。

MCナイロン グレード早見表

表2:MCナイロン 主要グレード一覧
グレード 識別色 特徴 主な用途
MC703HL(本製品) 紫色 潤滑油含浸・自己潤滑。動摩擦係数0.15-0.20で無給油長期使用が可能 食品機械・摺動ガイド・無給油軸受け
MC901 青色 強度・剛性・耐摩耗性のバランスに優れた汎用基本グレード 歯車・ローラー・一般産業機械部品
MC900NC ナチュラル(白系) 着色剤なし・高純度。MC901と同等の機械特性 食品機器・医療機器・高純度要求部品
MC801 濃灰色 耐候性・UV安定剤配合で屋外長期使用に対応 農業機械・建設機械・屋外搬送装置
MC602ST 茶色 高強度・120℃以上耐熱。ガラス繊維等のフィラー配合 高負荷・高温環境の構造部品
MC501CDR系 黒色 カーボン系導電・帯電防止。抵抗値の異なる複数グレードあり 半導体製造装置・防爆エリア・クリーンルーム

※ 表中の「MC501CDR系」にはMC501CDR2(導電グレード)・MC501CDR6(帯電防止)・MC501CDR9(帯電防止・耐熱)・MC500ASR11(ノンカーボン帯電防止・アイボリー色)が含まれます。各グレードの加工についてはお問い合わせください。

MC703HLの特性と優位性

  • 動摩擦係数0.15-0.20の自己潤滑性 – 特殊潤滑油の含浸により、無給油での長期使用が可能です。標準MCナイロンの摩擦係数(0.28-0.35)と比較して約半分に低減されています
  • 標準MCナイロンの2〜3倍の耐摩耗性 – 比摩耗量が小さく、摺動部品として長寿命を実現します。メンテナンスフリーでのランニングコスト削減に貢献します
  • 密度1.16 g/cm³の軽量性 – 金属(青銅・ステンレス)の約1/7の重量で、装置の軽量化に大きく貢献します
  • アルコール・弱酸・弱アルカリへの優れた耐薬品性 – 多くの使用環境で安定した性能を発揮します。食品機械への使用実績もあります
  • 優れた切削加工性 – 旋盤・フライス・穴あけ・溝加工など多様な機械加工が可能で、今回のような薄板への複合加工にも対応できます

MC703HL樹脂の主要物性値

表3:MC703HL主要物性値
物性項目 単位 MC703HL 試験方法
密度g/cm31.16ISO 1183
引張強度MPa75ISO 527
引張弾性率MPa2,800ISO 527
曲げ強度MPa105ISO 178
圧縮強度MPa95ISO 604
動摩擦係数(対鋼・無潤滑)0.15-0.20ASTM D3702
比摩耗量10-8 mm3/N・m35JIS K7218
連続使用温度80-100
吸水率(23℃・24h水中)%0.5ISO 62

※ 上記は参考値です。実際のご使用に際してはメーカーのデータシートをご確認ください。

他素材との比較分析

凡例:■ MC703HL(本素材)■ 他樹脂素材■ 金属素材

表4:MC703HL・他樹脂・金属素材の比較
特性項目 MC703HL MC900NC MC801 MC602ST 青銅 SUS304
密度(g/cm3 1.16 1.15 1.15 約1.22 8.8 7.93
動摩擦係数(対鋼・無潤滑) 0.15-0.20 0.28-0.35 0.28-0.35 0.30-0.40 0.15-0.25 0.40-0.50
引張強度(MPa) 75 80 80 110 200-400 520
連続使用温度(℃) 80-100 80-100 80-100 120以上 200以上 200以上
耐摩耗性
耐薬品性
加工性
コスト指数
汎用性
切削事例一覧 MC703HL切削事例一覧 MC900NC切削事例一覧 MC801切削事例一覧 MC602ST切削事例一覧

※ 評価基準:◎優秀・○良好・△やや劣る・×不適。各値は参考値です。MC602STはガラス繊維強化グレードのため密度・強度が高め。具体的な数値はメーカーデータシートをご確認ください。

MC703HLを選ぶべきケース・再検討すべきケース

表5:MC703HL素材選定ガイド
この素材が向いているケース 他素材も検討すべきケース
給油が困難な箇所での長期摺動(ガイドレール・ブッシュ・軸受け) 連続100℃超の高温環境(MC602STなどを検討)
潤滑油の使用が制限される食品機械・医療機器周辺の部品 強酸・強アルカリに常時さらされる環境
金属からの軽量化・騒音低減・錆対策を目的とした置き換え 多湿・水中環境で高精度(μmオーダー)が要求される部品(吸水寸法変化の影響)
試作1個からの小ロット生産、補修部品、短期納品案件 高強度・高剛性が最優先の構造部品(金属や高強度グレードを検討)
V溝・薄板・小径穴など複雑形状の精密切削加工が必要な部品 長期屋外暴露環境(UV劣化対策が必要。MC801を検討)

※ 判断に迷う場合はお気軽にご相談ください。使用条件をお聞きして最適な素材をご提案します。

長所と短所

表6:MC703HL 長所・短所
長所(メリット) 短所(デメリット)
自己潤滑性
動摩擦係数0.15-0.20で、無給油での長期使用が可能
吸水による寸法変化
水分を吸収するため、高精度部品では湿度管理が必要
高い耐摩耗性
標準MCナイロンの2-3倍の耐摩耗性能でメンテナンスコストを削減
耐熱性の限界
連続使用温度が100℃程度で、高温環境には不向き
軽量性
金属の約1/7の重量で、装置の軽量化に貢献
強酸・強アルカリへの限界
濃硫酸・強アルカリには侵される可能性がある
騒音低減効果
金属同士の接触音を大幅に低減し、静音環境に貢献
紫外線劣化
屋外長期使用では紫外線対策が必要(屋外用はMC801を推奨)
優れた切削加工性
フライス・旋盤・ドリルなど多様な機械加工が可能で、複雑形状にも対応
線膨張係数が金属より大きい
温度変化による寸法変化を設計に織り込む必要がある

よくあるトラブルと当社の対策

表7:よくあるトラブルと当社の対策
トラブル 主な原因 当社の対策
薄板の反り・変形 切削熱の蓄積・固定治具による偏った応力 均一クランプ治具の使用と低発熱切削条件(エアブロー・切削速度最適化)
V溝の寸法精度不良 工具選定の不適合・送り速度が速すぎる 専用エンドミルの選定と最適な送り速度・深さ設定による段階的切削
貫通穴の位置ずれ ドリルの偏芯・ワーク固定の不足 中心もみによる案内穴形成とショートドリルの使用、精密位置決め
バリ・ケバの発生 工具の摩耗・高送り速度・工具選定の不適合 鋭利な工具の適時交換と適切な切削条件の維持、仕上げパスの追加
吸水による完成後の寸法変化 MCナイロン固有の吸水性 使用環境の湿度を踏まえた公差設計のご提案と加工後の適切な保管管理

※ 上記以外のトラブルや加工に関するご不安もお気軽にご相談ください。

加工が活躍する分野

  • 産業機械・搬送装置 – ガイドレール、スライドプレート、軸受けブッシュ、ローラーなど、無給油で動く摺動部品として幅広く使用されています
  • 食品機械・包装機械 – 潤滑油が使えない食品接触部品(コンベアガイド・充填機部品・包装機ガイド)として最適です
  • 半導体・電子機器製造装置 – 基板搬送ガイド、クリーンな環境での摺動部品として使用されています
  • 試作・開発分野(小ロット対応) – 1個からの製作に対応しており、形状確認用の試作品や少量の補修部品にも迅速にご対応します

よくある質問(FAQ)

Q1. MC703HL樹脂の加工時に注意すべき点は何ですか?

A1. 切削熱の管理が最重要です。適切な切削速度(周速100〜300m/min)とエアブロー・切削液で発熱を抑制し、鋭利な工具による確実なチップ排出を心がけます。薄板加工では固定方法にも注意が必要です。

Q2. 標準のMCナイロンとMC703HLの違いは何ですか?

A2. 最大の違いは特殊潤滑油の含浸です。MC703HLは摩擦係数が標準MCナイロンの約半分(0.15-0.20)まで低減されており、無給油での長期使用が可能です。

Q3. MC703HLの吸水による寸法変化はどの程度ですか?

A3. 吸水率は約0.5%(23℃・24時間水中)です。高精度が要求される部品では使用環境の湿度を考慮した余裕代の設計をお勧めします。詳細はご相談ください。

Q4. どのような形状の加工が可能ですか?

A4. フライス加工・旋盤加工・穴あけ・ねじ切りなど、一般的な機械加工がすべて可能です。今回のような薄板・V溝・小径穴の複合加工にも対応しています。加工可否は図面を拝見してご回答します。

Q5. MC703HLは食品機械に使用できますか?

A5. 食品衛生法に適合した材料で、給油不可の食品接触部品への使用実績があります。具体的な用途への適合については、事前の確認や証明書が必要な場合がありますのでお問い合わせください。

Q6. MC703HLの耐薬品性はどの程度ですか?

A6. アルコール類・炭化水素系溶剤・弱酸・弱アルカリに対して安定しています。ただし、濃硫酸・濃硝酸・フェノール・蟻酸などの強酸や高温の強アルカリには侵される可能性があります。具体的な薬品は個別にご確認ください。

Q7. 最小加工可能寸法はどのくらいですか?

A7. 穴径は最小φ1mm、薄肉部は最小1mm程度まで対応可能です(今回の事例では厚さ1mmの薄板を実現)。形状・アスペクト比によって変わりますので、詳細は図面をお送りください。

Q8. 納期はどのくらいかかりますか?

A8. 加工内容や数量により異なりますが、標準的な部品で5〜7営業日程度が目安です。繁忙期や複雑形状では変動します。特急対応もご相談に応じますので、お見積り時にお知らせください。

Q9. MC703HLの色は選べますか?

A9. MC703HLの標準色は紫色のみです。摺動グレードの専用識別色です。他の色が必要な場合は、MC901(青色)やMC900NC(ナチュラル色)など別グレードへの変更をご検討ください。

Q10. 金属部品からの置き換えは可能ですか?

A10. 多くの場合で可能です。軽量化・騒音低減・無給油化・錆対策のメリットが得られます。強度計算や熱膨張を考慮した設計変更が必要な場合があります。図面や使用条件をお知らせいただければご提案します。

Q11. 表面処理は可能ですか?

A11. 一般的なメッキや塗装は密着性の問題で困難です。レーザーマーキングによる印字や、機械的な表面テクスチャー加工(梨地・溝加工など)は対応可能です。特殊な処理は別途ご相談ください。

Q12. 小ロットでも対応可能ですか?

A12. 1個からの製作に対応しています。試作品・補修部品など小ロットのご注文も歓迎します。将来の必要数量の見込みをお知らせいただくと、より適切なご提案が可能です。

ご依頼から納品までの流れ

  1. お問い合わせ・図面送付 – メール・FAX・お問い合わせフォームから図面(PDF・DXF・STEP等)をお送りください
  2. 技術検討・お見積り – 加工可否を確認し、通常2〜3営業日でお見積りをご提出します
  3. ご発注・材料手配 – 注文書のご発行後、MC703HL素材の確認と加工プログラムを準備します
  4. 精密加工・品質検査 – マシニングセンターで加工後、全寸法を測定器にて検査します
  5. 梱包・納品 – 緩衝材で製品を保護し、ご指定の方法でお届けします

まとめ

株式会社三森製作所では、MC703HL(MCナイロン摺動グレード)を用いた精密切削加工を試作1個からの小ロット生産まで承っています。今回のような薄板・V溝・小径穴の複合加工も対応可能です。図面やご要望をお聞かせいただければ、最適な加工方法とお見積りをご提案します。

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