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ABS樹脂3次元切削加工|ブロック材からの薄肉精密削り出し

- プラスチック加工品例 -

ABS樹脂3次元切削加工|ブロック材からの薄肉精密削り出し

ナチュラル色ABS樹脂のブロック材を3軸マシニングセンターで削り出した3次元切削加工事例で、外形378×116×74.2mmの薄肉テーパー形状部品を、リブ・T溝などの精密切削で製作した内容を解説します。

この記事の要点

  1. ナチュラル色ABS樹脂のブロック材を3軸マシニングセンターで削り出した外形378×116×74.2mm(高さ公差-0.2〜0)の3次元切削加工事例です。
  2. 外形に直線が無くすべて曲面で構成され、上から下にかけてテーパー形状に広がり、底部で約5mmの薄肉に仕上げる難加工要素を一体加工しています。
  3. 縦リブ4mm(2か所)底縁1.5mmR2.8切り欠き(2か所)幅2.8mmのT溝(2か所)を、細い工具とTスロットカッターで精密に仕上げる工程を解説します。
  4. ABS樹脂の主要物性値、PP・PE・PVCおよび金属(アルミ・ステンレス)との比較、素材選定ガイド、長所・短所を一覧で確認できます。
  5. アンダーカット対応や薄肉部の変形防止など現場で起こりやすいトラブルの対策、12項目のFAQで具体的な疑問にも回答しています。
ABS樹脂3次元切削加工品の全体形状を斜め上から撮影。外形378×116×74.2mm(高さ公差-0.2~0)、ブロック材から削り出した薄肉テーパー形状の全貌(外観・内部のくり抜き)が確認できるナチュラル色完成品1個。
ナチュラル色ABS樹脂のブロック材から削り出した完成品(外形378×116×74.2mm高さ公差-0.2〜0)。3軸マシニングセンターによる薄肉テーパー形状の3次元切削加工品を斜め上から撮影し、すべて曲面で構成された外観と、くり抜かれた内部形状を一望できる構図です。
ABS樹脂3次元切削加工品の精密加工部分を捉えたクローズアップ写真。内部の縦リブ4mm、底縁1.5mm、R2.8切り欠き、幅2.8mmのT溝など、細かい3次元形状の加工要素が明瞭に確認できる。
同じ完成品をクローズアップした写真。縦リブ4mm(2か所)底縁1.5mmR2.8切り欠き(2か所)幅2.8mmのT溝(2か所)など、細いフラットエンドミル・細いボールエンドミル・Tスロットカッターを駆使して仕上げた精密切削箇所の細部を確認できます。
表1:本製品の代表仕様
項目内容
素材ナチュラル色ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン)
外形寸法378mm×縦116mm×高さ74.2mm(高さのみ公差-0.2〜0)
加工内容3次元切削加工(ブロック材からの削り出し)
加工設備3軸マシニングセンター
切削工具フラットエンドミルボールエンドミルTスロットカッター
精密加工要素縦リブ4mm(2か所)・底縁1.5mmR2.8切り欠き(2か所)・幅2.8mm T溝(2か所)
仕上げ糸面取り(バリ取り・エッジ部の面取り)
ロット試作1個から小ロット生産まで対応

※ 外形寸法のうち、高さ74.2mmには公差-0.2〜0が適用されています。

▶ これまで製作したABS樹脂3次元切削加工事例は、ABS樹脂3次元切削加工事例一覧をご覧ください。

当社の加工実績:掲載加工事例543件(2026年5月現在)。ABS樹脂を含む樹脂素材の小ロット加工を多数手がけており、試作1個からご対応しています。

ABS樹脂精密部品の加工内容と加工方法

工程設計の要点

  1. 図面確認とNCプログラム作成:客先からメールで届いたIGSファイル(3次元CADデータ)を3次元CADCAMで読み込み、外形・内形・精密部の加工順序を設計してNCプログラムを作成します。
  2. ブロック材の準備ナチュラル色ABS樹脂のブロック材を仕上げ寸法より一回り大きくカットし、固定治具にセットします。
  3. 外形の3次元曲面切削:フラットエンドミル・ボールエンドミルを使い分け、直線を含まない曲面とテーパー形状を3軸マシニングセンターで削り出します。
  4. 内部のくり抜き加工:底部で約5mm、上部はそれ以下まで肉を落とし、外形のテーパーに沿った薄肉構造を仕上げます。
  5. リブ・縁・R切り欠きの精密切削:縦リブ4mm(2か所)・底縁1.5mm(内部全体)・R2.8切り欠き(2か所)を、細いエンドミルで仕上げます。
  6. T溝の掘り込みTスロットカッターを使用して、幅2.8mmのT溝を2か所掘り込みます。
  7. 糸面取り・寸法検査・梱包・出荷:エッジのバリ取りと面取り、図面照合による寸法検査を行い、緩衝材で保護して宅配便で出荷します。

3次元切削加工で注意すべきポイント

  • 工具選定とアンダーカット対応:通常の刃物では届かない凹部があるため、細いボールエンドミルTスロットカッターを組み合わせて使い分けます。
  • 薄肉部の変形防止:底部約5mmまで肉を落とすため、切削順序を工夫し、片持ち状態を避けて剛性を確保しながら段階的に削ります。
  • 切削熱の管理:ABS樹脂は熱変形温度が約85〜100℃と高くないため、切削速度・送り・切り込み深さのバランスをとり、熱だまりを避けて加工します。
  • びびり振動の抑制:曲面部・薄肉部でのびびり振動を防ぐため、突き出し量を抑え、工具経路を最短化します。
  • T溝加工の段取りTスロットカッターは刃のクリアランスが限られるため、進入経路と退避経路を慎重に設定します。
  • 仕上げ面の品質確保:ABS樹脂は表面仕上げが美しい素材ですが、刃先摩耗や熱の影響で曇りが出るため、仕上げ刃を新しい状態で使用します。
この部品の加工について相談する

電話での問い合わせは 0553-33-6927 まで

本製品で使用したABS樹脂について

本製品では、ナチュラル色のABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)ブロック材を使用しています。ABS樹脂は3つのモノマーの共重合体で、機械的強度・加工性・寸法安定性のバランスに優れた汎用エンジニアリングプラスチックです。グレードは汎用・耐衝撃・難燃・耐熱・めっき用などが市販されており、用途や指定に応じて支給品・購入品いずれにも追加工で対応します。詳細はABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン)の素材解説をご参照ください。

ABS樹脂の特性と優位性

  • 機械的強度と耐衝撃性のバランス:引張強度40〜50MPaに加え、ブタジエン成分により衝撃に強く割れにくい性質を持ちます。
  • 加工性が非常に高い切削・接着・塗装のいずれにも対応しやすく、複雑な3次元形状の削り出しに向いた素材です。
  • 寸法安定性が高い:吸水率が約0.2%と低めで、加工後の経時変形が起こりにくく、精密部品に適しています。
  • 表面仕上げが美しい:切削後の滑らかな面状態が得られ、外観部品や試作モデルに適します。
  • コストパフォーマンスに優れる:エンプラの中でも安価な部類で、機能と価格のバランスが取りやすい素材です。

ABS樹脂の主要物性値

表2:ABS樹脂の主要物性値(代表値)
項目数値(代表値)
比重1.04〜1.07
引張強度(MPa)40〜50
曲げ強度(MPa)60〜80
シャルピー衝撃強度・ノッチ付き(kJ/m2)15〜25
破断伸び(%)15〜40
熱変形温度・0.45MPa(℃)85〜100
吸水率・24時間(%)0.2〜0.4
体積抵抗率(Ω・cm)1015〜1016

※ 数値はISO規格に基づく一般グレード(汎用ABS)の代表値です。グレードや製造元により値は異なります。

ABS樹脂と他樹脂・金属素材の比較

表3:ABS樹脂と他樹脂・金属素材の比較
素材比重引張強度
(MPa)
衝撃強度
(kJ/m2)
加工性耐熱性コスト指数汎用性切削加工事例
ABS樹脂1.0540〜5015〜25ABS樹脂切削加工事例
PP(ポリプロピレン)0.9130〜403〜10PP切削加工事例
PE(高密度ポリエチレン)0.9522〜3010〜30×PE切削加工事例
PVC(硬質ポリ塩化ビニル)1.4050〜603〜5PVC切削加工事例
アルミニウム合金(A5052)2.68195〜235
ステンレス鋼(SUS304)7.93520〜×

※ 凡例: 対象樹脂(ABS樹脂)  他樹脂  金属素材
※ 評価記号:◎優秀・○良好・△やや劣る・×不適。衝撃強度はノッチ付きシャルピー試験の代表値(金属は測定法が異なるため省略)。

ABS樹脂を選ぶべきケース・再検討すべきケース

表4:ABS樹脂を選ぶべきケース・再検討すべきケース
この素材が向いているケース他素材も検討すべきケース
機械的強度と加工性のバランスを求める部品継続使用温度が100℃を超える用途
外観部品・カバー類で美しい仕上げが必要な部品強い紫外線を浴びる屋外用途(耐候グレード未使用の場合)
試作・小ロット生産で金型コストを避けたい部品強酸・強アルカリ・有機溶剤に常時さらされる用途
複雑な3次元形状・薄肉構造の切削部品高荷重・高剛性が要求される構造部材
塗装・接着・印字などの後加工が必要な部品摺動・耐摩耗が中心となる機械部品(POM等が有利)

※ 判断に迷う場合はご相談ください。用途・使用環境に応じて最適な素材をご提案します。

ABS樹脂の長所・短所

表5:ABS樹脂の長所・短所
長所短所
機械的強度と耐衝撃性のバランスが良い耐熱温度が約85〜100℃と高くない
切削・接着・塗装などの加工性が高い紫外線で変色・脆化しやすく耐候性に劣る
表面仕上げが美しく外観部品にも適する強酸・強アルカリ・有機溶剤への耐薬品性が限定的
寸法安定性が良く精密部品に適する摺動性・耐摩耗性はPOM等に劣る
エンプラの中でコストパフォーマンスが高い難燃グレード以外は燃焼性に注意

ABS樹脂加工でよくあるトラブルと当社の対策

表6:ABS樹脂加工でよくあるトラブルと当社の対策
トラブル主な原因当社の対策
切削面の白化・曇り刃先摩耗・切削熱の蓄積仕上げ刃の新品化と切削条件の最適化で透明感のある面に仕上げる
薄肉部の変形・反り片持ち状態・残留応力切削順序を工夫し、剛性を確保しながら段階的に肉を落とす
アンダーカット部の未加工通常工具の到達不良細いボールエンドミルTスロットカッターを使い分けて到達させる
バリの発生薄肉エッジでの刃先抜け最終工程で糸面取りを行い、すべてのエッジをきれいに整える
寸法のばらつき切削熱による膨張・固定の緩み熱管理と固定見直しを行い、図面公差内に収める

※ 不安な点があれば事前にお問い合わせください。図面段階で加工性をご相談いただくと品質と納期の両面で有利です。

ABS樹脂加工が活躍する分野

  • 家電・OA機器の外装カバー・筐体:表面仕上げの美しさと機械的強度のバランスを活かした外観部品。
  • 自動車・輸送機器の内装部品:内装トリム・グリル・ダッシュボード周辺など、寸法安定性と加工性が求められる部品。
  • 医療機器・分析機器のカバー類:意匠性を保ちつつ加工しやすい素材として、装置の外観部品に採用。
  • 試作・開発分野:金型を作らず1個から削り出せるため、設計検証用モデル・治具・検査用部品の小ロット製作で活躍。

ABS樹脂3次元切削加工に関するよくあるご質問

Q1. ABS樹脂の3次元切削加工はどんなメリットがありますか?

A1. 金型不要で高精度・複雑形状の加工が可能なため、試作や小ロット生産に最適です。リブ・T溝・R切り欠きなどを1部品に同時加工でき、設計変更にも柔軟に対応できます。

Q2. ブロック材から削り出すメリットは何ですか?

A2. 射出成形と比べて金型費用がかからず、設計変更にも柔軟に対応できます。試作1個から製作できるため、開発初期や評価段階の部品製作に向いています。

Q3. ABS樹脂の耐熱温度はどのくらいですか?

A3. 熱変形温度は約85〜100℃が目安です。連続使用温度はそれより低くなりますので、高温環境での使用にはご注意ください。

Q4. 屋外で使用できますか?

A4. ABS樹脂は紫外線で変色・脆化しやすく、長期間の屋外使用には適しません。耐候グレードの選定や、塗装・耐候コーティングの併用をご検討ください。

Q5. 図面やCADデータが無くても相談できますか?

A5. はい、形状スケッチや使用イメージからもご相談を受け付けます。お気軽にお問い合わせください。

Q6. 対応できるロットサイズはどのくらいですか?

A6. 試作1個から小ロット生産まで対応します。当社は小ロット品の精密切削加工を得意としています。

Q7. アンダーカット部分はどう加工していますか?

A7. 細いボールエンドミルTスロットカッターなどを使い分け、固定方向や工具経路を見直して対応します。本事例でも工具選定を試行錯誤して仕上げています。

Q8. ABS樹脂とPP・PE・PVCの使い分けは?

A8. 機械的強度と加工性のバランスを重視する場合はABS、軽量化や耐薬品性を優先する場合はPP・PE、剛性と耐薬品性を求める場合は硬質PVCが向きます。

Q9. 表面仕上げは選べますか?

A9. 切削仕上げ・バフ研磨・塗装・印字など各種対応が可能です。用途に応じてご相談ください。

Q10. 納期はどのくらいですか?

A10. 加工内容や数量により異なりますが、標準的な部品で5〜7日程度です。お急ぎの場合は短納期対応もご相談ください。

Q11. 受け付けている図面形式は?

A11. STEP・IGES・DXF・DWG・PDFなど主要な形式に対応しています。手書きの図面やスケッチからも対応可能です。

Q12. T溝加工は他の樹脂でも依頼できますか?

A12. はい、PP・PE・PVCをはじめ、POM・PCなど多様な樹脂で対応可能です。Tスロットカッターの選定により幅・深さを指定して掘り込みます。

ご依頼から納品までの流れ

  1. お問い合わせ・図面送付:お問い合わせフォームまたは電話にてご連絡いただき、図面・CADデータ(STEP/IGES等)または形状イメージをお送りください。
  2. お見積り・仕様確認:素材・寸法・公差・数量・納期を確認のうえ、お見積りをご提示します。
  3. ご注文・素材手配:ご発注後に素材を手配し、NCプログラムを作成して加工準備を行います。
  4. 切削加工・寸法検査:3軸マシニングセンター等で加工し、図面に基づき寸法・外観を検査します。
  5. 梱包・出荷:適切な緩衝材で保護し、宅配便にて出荷します。

まとめ

本事例は、ナチュラル色ABS樹脂のブロック材を3軸マシニングセンターで削り出し、外形378×116×74.2mm(高さ公差-0.2〜0)の薄肉テーパー形状に仕上げた3次元切削加工品です。リブ・T溝・R切り欠き・アンダーカットなど複合的な難加工要素を1部品で同時に実現しました。試作1個からの小ロット対応も可能ですので、ABS樹脂や他樹脂の精密切削加工をご検討の方は、お気軽にご相談ください。

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