
PFA樹脂切削加工|L字形状・二段長穴ザグリ・隅R
- プラスチック加工品例 -
PFA樹脂切削加工|L字形状・二段長穴ザグリ・隅R
PFA樹脂(フッ素樹脂)の切削加工事例です。3軸マシニングセンターで外形30mm×35mm×8mmのL字形状・二段長穴ザグリ・隅R・C5面取りを含む複合形状の精密部品を製作した工程と素材特性を解説します。
この記事の要点
- PFA樹脂(フッ素樹脂)板材を3軸マシニングセンターで切削し、外形30mm×35mm×8mmのL字形状部品を製作した加工事例を詳しく解説。
- 二段長穴ザグリ(外穴8mm×11mm×深5.5mm、内穴4mm×8mm貫通)・C5面取り・隅Rを含む複合形状の加工工程と使用工具を詳述。
- PFA樹脂の連続使用温度260℃・引張強度23〜31MPa・体積抵抗率1018Ω·cm超など、主要物性値を一次資料に基づき掲載。
- PTFE・PCTFE・PVDF・フッ素ゴム(FKM)・SUS316との比較表で、PFA樹脂の化学的安定性・半透明性・成形加工性の優位点を整理。
- 隅R(コーナーR)の発生メカニズム・軟質素材の変形防止ポイントなど、PFA切削加工のよくある質問12件と当社の対策を掲載。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 素材 | PFA樹脂(ペルフルオロアルコキシ・フッ素樹脂) |
| 外形寸法 | 横30mm×縦35mm×高さ8mm |
| 形状特徴 | L字形状(右手前角削り落とし・内角に隅Rあり)、C5面取り |
| 主な加工内容 | 二段長穴ザグリ:外穴8mm×11mm×深5.5mm(R4)〜 内穴4mm×8mm(R2・貫通) |
| 加工設備 | 3軸マシニングセンター |
| 使用工具 | フルバックカッター(正面フライス)、フラットエンドミル、C面取りカッター |
| 仕上げ | 糸面取り処理(バリ取り)、寸法検査済み |
| 対応図面形式 | 各種2D/3D CADデータ、PDF、Fax図面対応(本事例はFax図面) |
PFA樹脂精密部品の加工内容と加工方法
工程設計の要点
- 図面確認と素材準備:客先よりFaxで届いた図面の詳細を確認し、PFA板材を必要サイズにカット。素材のロット・厚みにばらつきがないかも事前チェック。
- 外形加工(L字形状削り出し):フルバックカッターで横30mm×縦35mm×高さ8mmの外形を整え、4つの角のうち右手前の角を削り落としてL字形状を形成。内角には刃物径に由来する隅R(コーナーR)が残る。
- C面取り加工:L字型の切り落とし部にC面取りカッターでC5の面取りを施す。エッジの欠けを防ぎ、組み付け精度を高める。
- 二段長穴ザグリ加工:フラットエンドミルで外側長穴(横8mm×縦11mm×深さ5.5mm・R4)を削り出し、続けて内側の貫通長穴(横4mm×縦8mm・R2)を重ねて加工し、二段のザグリ形状を完成させる。
- 糸面取り加工:全エッジのバリを除去し、糸面取りで安全かつ清潔な仕上がりに整える。
- 寸法検査・梱包・出荷:図面仕様と照合し全数確認。適切に梱包して宅配便で出荷。
切削加工で注意すべきポイント
- 切削条件の最適化:PFA樹脂は軟質で熱に弱いため、切削速度と送り速度を適切に下げ、切削熱の蓄積を防ぐ。
- 断続的な加工:連続切削による熱蓄積を防ぐため、断続的な切り込みで加工を進め、素材の軟化・変形を抑制する。
- 鋭利な刃物の使用:摩耗した工具では引きちぎりや表面荒れが生じやすいため、切れ味の良いエンドミルに随時交換する。
- クランプ方法の配慮:過度な締め付けは変形を招く。均等かつ必要最低限のクランプ力でワークを固定する。
- 隅Rの設計上の折り込み:L字内角の隅Rは使用する工具径に依存するため、設計段階でRサイズを客先と確認・合意する。
- 二段長穴の加工順序:外側長穴を先に仕上げてから内側の貫通穴を加工することで、工具のたわみを最小化し寸法精度を確保する。
- 温度安定後の最終検査:PFA樹脂は線膨張係数が大きいため、加工後に素材が室温に戻ってから最終寸法検査を実施する。
電話での問い合わせは 0553-33-6927 まで
使用素材:PFA樹脂(ペルフルオロアルコキシ)について
本製品で使用した素材はPFA樹脂(ペルフルオロアルコキシ・Perfluoroalkoxy)です。テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体で、フッ素樹脂の中でも成形加工性に優れた素材です。PTFEが粉体焼結成形を主体とするのに対し、PFAは溶融成形が可能なため、切削加工で複雑形状を実現しやすい特長があります。
グレードは汎用・高純度・導電性・強化など用途に応じた品種があります。詳しくはふっ素樹脂(テフロンほか)素材情報ページをご覧ください。
PFA樹脂の特性と優位性
- 連続使用温度260℃の高耐熱性:PTFEと同等のフッ素樹脂最高レベルの耐熱性を持ち、高温環境での長期使用に対応。溶融成形が可能なため、PTFEより切削加工性に優れる。
- ほぼ全ての化学物質に対する不活性性:強酸・強アルカリ・有機溶剤・酸化性物質に対して優れた耐性を示し、半導体・化学プラント・医薬品製造など過酷な薬品環境で安定した性能を発揮。
- 半透明で内部の視認が可能:PTFEが不透明なのに対し、PFAは半透明性を持つため、流路内の液面確認やプロセス監視が必要な部品に有利。
- 優れた電気絶縁性:体積抵抗率1018Ω·cm超・誘電率2.1(1MHz)と、エレクトロニクス・高周波機器部品にも適した電気特性を備える。
- PTFEより優れた表面平滑性と成形加工性:溶融成形により均質な材料構造を持ち、切削後の表面品質と寸法安定性がPTFEと比べて優れている。
PFA樹脂の主要物性値
| 物性項目 | 単位 | 標準値 | 測定方法 |
|---|---|---|---|
| 密度 | g/cm3 | 2.12〜2.17 | ASTM D792 |
| 融点 | ℃ | 305〜315 | DSC |
| 連続使用温度 | ℃ | 260 | UL規格 |
| 引張強度 | MPa | 23〜31 | ASTM D638 |
| 伸び率 | % | 300〜400 | ASTM D638 |
| 体積抵抗率 | Ω·cm | >1018 | ASTM D257 |
| 誘電率(1MHz) | – | 2.1 | ASTM D150 |
| 吸水率(24h) | % | <0.03 | ASTM D570 |
※ 数値はグレードおよびメーカーにより異なる場合があります。設計への適用時は採用素材のデータシートを必ずご確認ください。
他素材との比較表
| 比較項目 | PFA樹脂 | PTFE | PCTFE | PVDF | フッ素ゴム(FKM) | SUS316 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連続使用温度 | 260℃ ◎ | 260℃ ◎ | 約120℃ ○ | 約150℃ ○ | 約200℃ ◎ | 600℃以上 ◎ |
| 耐薬品性 | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ◎ | △(耐塩素弱) |
| 透明性 | 半透明 ○ | 不透明 × | 半透明〜透明 ○ | 半透明〜不透明 △ | 不透明 × | 不透明 × |
| 切削加工性 | ○(軟質注意) | △(クリープ・焼結主体) | ○ | ○ | ×(弾性体のため不適) | ○ |
| 電気絶縁性 | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ×(導電性) |
| コスト指数 | 高 | 高 | 非常に高 | 中〜高 | 中〜高 | 低〜中 |
| 汎用性 | ○ | ◎ | △(高コスト限定) | ○ | ○(シール用途中心) | ◎ |
| 切削加工事例 | PFA切削加工事例 | PTFE切削加工事例 | PCTFE切削加工事例 | PVDF切削加工事例 | – | – |
※ 凡例:◎優秀・○良好・△やや劣る・×不適。連続使用温度はUL規格またはメーカー公表値。青背景=PFA樹脂(本素材)、黄背景=他のフッ素樹脂、橙背景=ゴム素材(FKM)、白背景=金属素材(SUS316)。数値はグレードにより異なる場合があります。PCTFEは薄板(3.2mm以下)を急冷成形した場合に高い透明性を示しますが、切削加工品のような厚みのある素材では半透明になるケースが多く見られます。
PFA樹脂の素材選定ガイド
| PFA樹脂が向いているケース | 他素材も検討すべきケース |
|---|---|
| 260℃以上の高温環境で強酸・強アルカリに接触する部品 | 120℃以下の比較的低温で使用する場合(PCTFEやPVDFで対応可) |
| 流路内の液面確認など、内部の視認性が必要な部品 | 硬さ・耐摩耗性など機械的強度が優先される用途(PEEK・SUS等) |
| PTFEと同等の耐薬品性を持ちながら複雑形状の切削加工が必要な場合 | コストを抑えたい場合(PFAはエンジニアリングプラスチックより高価) |
| 半導体・医薬品・食品分野で高純度・溶出物ゼロが要求される部品 | 繰り返し変形・シール性が必要な可撓性部品(フッ素ゴムを検討) |
| 試作1個から小ロット生産まで対応が必要な高耐熱フッ素樹脂部品 | 非常に大型の部材が必要な場合(板・棒材サイズに制約あり) |
※ 素材の選定に迷う場合はご相談ください。用途・環境・予算に応じた最適素材をご提案します。
PFA樹脂の長所と短所
| 長所(メリット) | 短所(デメリット) |
|---|---|
| 連続使用温度260℃の高耐熱性 | 軟質で変形しやすく、精密加工に技術が必要 |
| ほぼ全ての化学物質に対して不活性 | 通常の接着剤では接着が困難 |
| PTFEより成形加工性が良好・表面平滑性が高い | 汎用プラスチックと比べて高価 |
| 半透明で内部の視認が可能 | 線膨張係数が大きく、温度変化による寸法変化に注意が必要 |
| 優れた電気絶縁性(体積抵抗率1018Ω·cm超) | 帯電しやすい(静電気対策が必要な場合あり) |
PFA樹脂切削加工でよくあるトラブルと当社の対策
| トラブル | 主な原因 | 当社の対策 |
|---|---|---|
| 加工中の変形・たわみ | クランプ不足または切削力が高すぎる | 均等なクランプと低切削力設定で変形を抑制 |
| 表面のむしれ・バリ発生 | 刃物の摩耗や切削速度の過多 | 切れ味の良い刃物に随時交換し、切削条件を最適化 |
| 寸法精度の不安定 | 切削熱による素材の膨張 | 断続加工で熱を逃がし、室温安定後に最終検査を実施 |
| 長穴ザグリの底面粗さ不良 | エンドミルのたわみや送り速度のばらつき | 短い高剛性エンドミルを使用し、仕上げパスで品質確保 |
| 隅Rの寸法不一致 | 設計・製造間での隅Rサイズの確認不足 | 加工前に図面で隅Rを客先と確認・合意してから着工 |
トラブルを未然に防ぐため、加工前の図面確認と素材特性の把握を徹底しています。ご不安な点はお気軽にご相談ください。
PFA樹脂切削加工が活躍する分野
- 半導体・液晶製造装置:ウェハー搬送・エッチング装置内部品・配管継手など、高純度と耐薬品性が同時に要求される精密部品。
- 化学プラント・研究設備:強酸・強アルカリに接する反応容器内部品・配管ライニング・バルブシートなど、過酷な薬品環境向け部品。
- 医薬品・食品製造装置:FDA適合が必要な純水配管・無菌充填装置部品・食品機械の非粘着表面部材など。
- 試作・開発分野:耐熱・耐薬品性が求められる複雑形状部品の試作を1個から対応。設計検証用サンプルの短納期製作にも実績。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. PFA樹脂の切削加工で注意すべき点はありますか?
A1. PFA樹脂は軟質なため、切削速度と送り速度の最適化が重要です。切削熱による材料軟化を防ぐため断続的な加工を行い、ワークの変形を防ぐクランプ方法にも配慮が必要です。刃物は切れ味の良いものを使用し、適切な切り込み量で加工します。
Q2. 隅R(コーナーR)とは何ですか?なぜL字形状の内角に発生するのですか?
A2. 隅R(コーナーR)とは、L字形状などの内角を削る際に工具(エンドミル)の先端半径に起因して残る丸み(R)のことです。フラットエンドミルで内角を切削すると、工具径の半分に相当するRが内角に残ります。設計時に隅Rのサイズを確認・合意しておくことで、機能と加工精度を両立できます。
Q3. PFA樹脂とPTFE樹脂の違いは何ですか?
A3. 両者とも連続使用温度260℃の優れた耐薬品性を持ちますが、PFA樹脂は溶融成形が可能なため切削加工性が良く、PTFEより表面平滑性が高く半透明な外観を持ちます。PTFEは粉体焼結成形が主体で、PFAの方が複雑形状の加工に向いています。
Q4. どの程度の寸法精度まで対応可能ですか?
A4. 標準的な部品で±0.1mm前後を基準としており、形状や寸法によっては±0.05mm程度の精密加工にも対応しています。ただし、PFA樹脂は軟質で線膨張係数が大きいため、薄肉部品や長尺部品では公差が緩くなる場合があります。
Q5. PFA樹脂の耐薬品性はどの程度ですか?
A5. PFA樹脂はほぼ全ての化学物質に対して不活性で、強酸・強アルカリ・有機溶剤・酸化性物質に優れた耐性を示します。ただし、アルカリ金属や高温のフッ素ガスなどには注意が必要です。半導体・化学プラント向け部品での実績が豊富です。
Q6. 最小ロットや納期はどのくらいですか?
A6. 試作・小ロット案件を多数手がけており、1個から対応しています。標準的な部品で5〜7日程度を目安としていますが、形状の複雑さや数量により変動します。お急ぎの場合はご相談ください。
Q7. PFA樹脂の接着や溶接は可能ですか?
A7. PFA樹脂は非粘着性が高く、通常の接着剤では接着が困難です。熱溶着や超音波溶着は可能な場合がありますが、機械的な結合(ボルト締め・インサート)の方が信頼性が高く、一般的です。
Q8. 食品・医療用途での使用は可能ですか?
A8. PFA樹脂はFDA認証材料であり、食品との直接接触にも対応しています。無味無臭で溶出物がなく、医薬品製造装置や食品機械の部品としての実績があります。用途によっては食品衛生法の適合確認もあわせてご確認ください。
Q9. 高温環境での寸法変化はありますか?
A9. PFA樹脂の線膨張係数は約100〜130×10-6/℃(グレードにより異なります)と、金属と比べて大きいため、温度変化による寸法変化を考慮した設計が必要です。精密嵌合部品では温度補償を検討することをお勧めします。
Q10. L字形状の二段長穴ザグリ加工はどのように行いますか?
A10. まずフルバックカッターで外形を整えてL字形状を削り出し、フラットエンドミルで外側長穴(8mm×11mm×深5.5mm)を加工します。続けて内側の貫通長穴(4mm×8mm)を重ねて削ることで二段ザグリ形状を完成させます。各工程で切削条件を調整し、変形を防ぎながら加工します。
Q11. PFAとPCTFE・PVDFはどう選び分ければよいですか?
A11. PFA樹脂は耐熱性(連続260℃)と耐薬品性のバランスが最も優れています。PCTFE樹脂は薄物では透明性が高いものの、切削加工品の厚みになると半透明〜透明の色味になり、耐薬品性も良好ですが、連続使用温度は約120℃程度でPFAより低めです。PVDF樹脂は良好な切削加工性と圧電特性を持ち、耐熱温度は約150℃程度です。高温・強薬品環境にはPFAが最適です。
Q12. 図面はどのような形式で支給すればよいですか?
A12. PDF・DXF・DWG・STP(STEP)など主要なCADデータ形式に対応しています。Faxやメール添付での図面受付も可能です。寸法・公差・材質・表面仕上げが明記されていれば、形式は問いません。不明な点はお気軽にご相談ください。
ご依頼から納品までの流れ
- お問い合わせ・図面支給:メール・Fax・お電話にてお問い合わせいただき、図面(PDF・CADデータ等)をお送りください。
- お見積もり:形状・数量・素材を確認のうえ、お見積もりをご提示します。
- 発注・素材手配:ご発注をいただき次第、PFA樹脂板材の手配を開始します。
- 切削加工・寸法検査:3軸マシニングセンターで加工後、図面仕様との全数照合検査を実施します。
- 梱包・出荷:検査合格品を適切に梱包し、宅配便でお届けします。
まとめ
PFA樹脂切削加工品は、連続使用温度260℃の高耐熱性・優れた耐薬品性・電気絶縁性を活かして半導体・化学プラント・医薬品製造・食品加工など多くの産業分野で活躍しています。当社では3軸マシニングセンターによる精密切削加工で、L字形状・二段長穴ザグリ・隅R・C面取りなど複合形状の部品を試作1個から小ロット生産まで対応しています。PFA樹脂の切削加工に関するご相談・お見積もりは、ぜひお気軽にお声かけください。
電話での問い合わせは 0553-33-6927 まで
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