MC801切削加工の詳細解説
本製品は、MC801樹脂(MCナイロン耐候グレード)の板材を使用し、客先支給の3次元CADデータをもとにCAD/CAMでNCプログラムを作成、マシニングセンターで複雑な立体形状を一貫加工しました。平面切削・外形加工・中刳り・テーパー穴・C面取り・貫通穴あけなど多工程を一気通貫で実施しています。
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MC801切削加工工程ステップ
- 3次元CADデータの受領と解析 – 客先支給データを精査し、加工可能性と最適な加工順序を検討します。
- CAD/CAMによるNCプログラム作成 – 専用CAD/CAMで工具経路を最適化し、マシニングセンター用NCプログラムを作成します。
- 素材の準備とセットアップ – MC801板材を適切な大きさにカットし、加工中の振動・変形を防ぐようクランプ方法を吟味して固定します。
- 平面切削加工(フルバックカッター使用) – 正面フライスで表面を平滑に切削し、基準面を作り出します。
- 外形加工(フラットエンドミル使用) – 側面の直角度・寸法精度を確保しながら外形形状を仕上げます。
- 中刳り切削加工(フラットエンドミル使用) – 内部形状・ザグリ穴を精密に切削し、深さ方向の寸法を管理します。
- テーパー穴加工(ボールエンドミル使用) – ボールエンドミルでテーパー状の穴や曲面を滑らかに仕上げます。
- C面取り加工(C面取りカッター使用) – 外径・内部の角部にC面を施し、組み立て時の引っ掛かりを防止します。
- 貫通丸穴あけ加工(ドリル使用) – ボルト・ピン用の貫通穴を正確な位置と直角度で加工します。
- 糸面取りと最終仕上げ – バリを除去し、鋭利なエッジに糸面取りを施して安全に仕上げます。
- 品質検査と出荷 – ノギス・マイクロメーターで寸法精度を確認し、検査合格後に梱包・納品します。
MC801切削加工で注意すべきポイント
- 切削速度の調整 – 熱可塑性樹脂のため摩擦熱による溶融・変形を防ぐため、切削速度(目安50~150m/min)と発熱管理が重要です。
- 工具選定と刃先角度 – 超硬工具やダイヤモンドコーティング工具を使用し、鋭角な刃先でバリの発生を抑えます。
- クーラントによる冷却 – 水溶性クーラントまたはエアブローで加工部を冷却し、寸法精度と工具寿命を確保します。
- 固定方法と変形対策 – 金属より剛性が低いため、適切な治具とクランプで固定し、切り込み量を抑えた多パス加工を行います。
- 吸水による寸法変化への配慮 – 吸水率を考慮した公差設定、または加工後の吸水安定化処理が必要です。
- バリ処理と面粗度管理 – 出口側バリを防ぐため送り速度・刃先形状を最適化し、仕上げ加工で面粗度を管理します。
- 切りくず排出の最適化 – エアブローやクーラントで切りくずを効率排出し、再付着による表面品質低下を防ぎます。
本製品で使用したMC801樹脂について
本製品にはMC801樹脂(MCナイロン耐候グレード)を使用しています。MC801は、一般的なMC901(標準MCナイロン)にカーボンブラック(特殊グラファイト)などの耐候性添加剤を配合したグレードで、屋外環境での長期使用に最適化された工業用エンジニアリングプラスチックです。MCナイロンには標準グレードのMC901(ブルー)のほか、耐候グレードのMC801(ブラック)、導電性グレード、摺動グレードなど、用途に応じたバリエーションが存在します。
? 各グレードの物性値・用途・加工事例はMCナイロン(MC Nylon)素材解説ページをご覧ください。
MC801樹脂の特性と優位性
- 優れた耐候性 – カーボンブラック配合により紫外線劣化を抑制。屋外環境での長期使用に対応します。
- 高い機械的強度 – 引張強度85~95MPa、曲げ強度110~130MPaと、樹脂材料の中でもトップクラスです。
- 自己潤滑性 – 無給油でも低摩擦係数を維持し、メンテナンス性が向上します。金属部品との摺動でも相手材を傷つけにくい特性があります。
- 耐薬品性 – 油脂類・有機溶剤・弱酸・弱アルカリに対して安定しています。
- 良好な機械加工性 – 切削・旋削・フライス・穴あけなど各種加工に対応し、複雑形状の部品製作が可能です。
- 軽量性 – 比重約1.15で、金属部品と比較して大幅な軽量化が実現できます。
- 電気絶縁性 – 体積抵抗率1013Ω・cm以上で、電気機器部品や絶縁用途にも使用できます。
MC801樹脂の主要特性(物性値)
| 特性項目 | 単位 | MC801の値 |
|---|---|---|
| 密度 | g/cm3 | 1.15~1.16 |
| 引張強度 | MPa | 85~95 |
| 曲げ強度 | MPa | 110~130 |
| 圧縮強度 | MPa | 100~120 |
| 伸び | % | 20~40 |
| シャルピー衝撃強度(ノッチなし) | kJ/m2 | 破断せず |
| ロックウェル硬さ | R スケール | 119~122 |
| 熱変形温度(1.82MPa荷重) | ℃ | 150~160 |
| 線膨張係数 | ×10-5/℃ | 8~9 |
| 吸水率(23℃、24時間) | % | 2.0~2.5 |
| 体積抵抗率 | Ω・cm | 1013以上 |
| 耐候性 | – | 優(紫外線劣化抑制) |
※上記物性値は代表値であり、保証値ではありません。実際の使用においては、環境条件や加工条件により変動する場合があります。
MC801・他樹脂素材・金属素材との比較表と優位性分析
MC801樹脂の特性を、他の代表的な樹脂材料および金属材料と比較しました。各素材の強みと弱みを把握することで、用途に応じた最適な素材選定が可能になります。
| 特性項目 | MC801 (耐候MCナイロン) |
MC901 (標準MCナイロン) |
POM (ポリアセタール) |
アルミニウム 合金(A5052) |
ステンレス鋼 (SUS304) |
|---|---|---|---|---|---|
| 密度(g/cm3) | 1.15~1.16 | 1.15~1.16 | 1.41~1.43 | 2.68 | 7.93 |
| 引張強度(MPa) | 85~95 | 85~95 | 60~70 | 195~265 | 520~650 |
| 耐候性 | 優 | 劣 | 中 | 中(腐食あり) | 優 |
| 耐摩耗性 | 優 | 優 | 優 | 中 | 中 |
| 自己潤滑性 | 優 | 優 | 優 | なし | なし |
| 吸水率(%) | 2.0~2.5 | 2.0~2.5 | 0.2~0.4 | なし | なし |
| 機械加工性 | 優 | 優 | 優 | 優 | 中 |
| 電気絶縁性 | 優 | 優 | 優 | なし(導電) | なし(導電) |
| コスト(指数) | 100 | 90 | 70 | 120 | 200 |
| 汎用性 | 屋外用途に特化 | 高 | 高 | 高 | 高 |
| 加工品事例 | MC801加工品事例 | MC901加工品事例 | POM加工品事例 | – | – |
※コスト指数はMC801を100とした相対値です。実際の価格は材料形状、数量、市場状況により変動します。
MC801樹脂の優位点
- 屋外環境での長期安定性 – 紫外線劣化を抑制し、標準MCナイロンでは困難だった屋外用途に対応できます。
- 軽量性と強度のバランス – 金属の約1/2~1/7の軽さでありながら、樹脂材料としては高い機械的強度を持ちます。
- メンテナンスフリー – 自己潤滑性により給油不要で、保守コストを削減できます。
- 加工の柔軟性 – 複雑形状の試作から小ロット生産まで短納期で対応可能です。
- コストパフォーマンス – ステンレス鋼の約半分のコストで、耐候性と機械的強度を両立できます。
MC801樹脂の長所と短所
| 長所(メリット) | 短所(デメリット) |
|---|---|
| 優れた耐候性 紫外線や風雨にさらされる屋外環境でも、長期間にわたり物性を維持 |
吸水による寸法変化 吸水率2.0~2.5%で、湿度環境により寸法が変化する(設計時の考慮が必要) |
| 高い機械的強度 引張強度85~95MPa、曲げ強度110~130MPaと樹脂の中でもトップクラス |
熱変形温度の限界 熱変形温度150~160℃で、高温環境(100℃以上連続)には不向き |
| 自己潤滑性 無給油で低摩擦を維持し、メンテナンスコストを削減 |
強酸・強アルカリへの耐性 濃硫酸、濃塩酸、濃アルカリには膨潤や劣化が発生 |
| 優れた耐摩耗性 金属との摺動でも摩耗が少なく、相手材を傷つけにくい |
金属比での剛性不足 ヤング率は金属の約1/30で、高荷重や精密位置決めには注意が必要 |
| 軽量性 比重約1.15で、金属部品の約1/2~1/7に軽量化可能 |
紫外線添加剤による色制限 MC801は黒色のみで、他の色での供給は困難 |
| 優れた機械加工性 切削・穴あけ・ミーリングなど各種加工に対応し、複雑形状の製作が容易 |
標準グレードより高コスト MC901と比較して約10~15%高価(耐候性付与のため) |
| 電気絶縁性 体積抵抗率1013Ω・cm以上で、電気機器部品にも使用可能 |
クリープ現象 長期荷重下では徐々に変形が進行する(応力設計の配慮が必要) |
※用途や使用環境に応じて、長所を活かし短所を補う設計が重要です。不明点はお気軽にご相談ください。
MC801加工でよくあるトラブルと当社の対策
MC801樹脂の切削加工では、素材特性に起因するトラブルが発生することがあります。当社では長年の経験により、これらのトラブルを事前に防止し、高品質な製品を安定してお届けしています。
| トラブル | 主な原因 | 当社の対策 |
|---|---|---|
| 寸法不良・変形 | 切削熱による熱膨張、クランプ力による変形、吸水による寸法変化 | 適切な切削条件とクーラント使用、治具設計の最適化、吸水率を考慮した公差設定 |
| バリの発生 | 工具の切れ味不足、切削速度・送り速度の不適切、出口側のサポート不足 | 超硬工具・コーティング工具の使用、工具経路の最適化、適切な送り速度設定 |
| 表面粗さの悪化 | 切削速度の過不足、工具摩耗、切りくずの再付着 | 仕上げ加工条件の最適化、工具の定期交換、エアブローによる切りくず除去 |
| 溶融・焼け | 切削速度過多による摩擦熱、クーラント不足 | 適切な切削速度管理、水溶性クーラントの十分な供給、切り込み量の調整 |
| 工具の早期摩耗 | 切削条件の不適切、工具材質の選定ミス | 超硬工具やダイヤモンドコーティング工具の使用、切削条件の最適化 |
| 穴精度の不良 | ドリルの振れ、切りくず排出不良、穴曲がり | ペックサイクル加工、高精度ドリルの使用、適切な送り速度と回転数設定 |
| クラック・割れ | 過度なクランプ圧、急激な温度変化、内部応力 | 適切なクランプ圧管理、段階的な加工、仕上げ代の確保 |
※MC801加工でお困りのことがございましたら、お気軽にご相談ください。
当社のMC801加工が活躍する分野
MC801樹脂は屋外環境での耐久性と高い機械的強度を兼ね備え、多様な産業分野で採用されています。当社の小ロット生産体制により、試作・開発段階から1個単位で対応しています。
主な加工実績分野
- 屋外設備機器部品 – 太陽光・風力発電設備、屋外照明、通信設備の絶縁部品・支持部品
- 産業機械部品 – 搬送装置のガイドローラー、チェーンガイド、ライナー、摺動部品
- 建築・土木関連部品 – 屋外用絶縁スペーサー、支持ブロック、ガイド部品
- 農業機械部品 – 耐候性が求められる駆動部品・摺動部品
- 電気・電子機器部品 – 屋外用絶縁部品、端子台、コネクタ部品
- 試作・開発用部品 – 機能確認用試作品・評価サンプル(1個~小ロット対応)
- 特注精密加工部品 – 3次元CADデータから製作する複雑形状の一品物部品
よくある質問(FAQ)
Q1. MC801とMC901の違いは何ですか?
A1. MC801は耐候グレードのMCナイロンで、MC901をベースにカーボンブラック(特殊グラファイト)などの耐候性添加剤が配合されています。屋外での長期使用にはMC801(黒色)、室内用途にはMC901(青色)をおすすめします。
Q2. MC801の加工で最小ロットは何個からですか?
A2. 1個から対応可能です。試作・開発用サンプル・一品物部品など、小ロット生産を得意としています。図面やCADデータをご支給いただければ、お見積りいたします。
Q3. 3次元CADデータからの加工は可能ですか?
A3. はい、可能です。STEP、IGES、Parasolid形式などの3次元CADデータに対応し、CAD/CAMでNCプログラムを作成してマシニングセンターで精密加工します。複雑な立体形状も高精度で製作できます。
Q4. MC801は屋外でどのくらいの期間使用できますか?
A4. 使用環境により異なりますが、一般的な屋外環境では5~10年以上の耐久性があります。過酷な環境での使用については、お気軽にご相談ください。
Q5. MC801加工の納期はどのくらいですか?
A5. 形状・数量により異なりますが、標準的な加工品で5~7日程度です。特急対応も可能ですので、お見積り時にご相談ください。
Q6. MC801は食品分野で使用できますか?
A6. MC801自体は食品衛生法の試験をクリアしていないため、直接食品に接触する用途には推奨しません。構造部品や食品に接触しない搬送ガイドなどには使用可能です。食品接触用途には適合グレードをご提案します。
Q7. 吸水による寸法変化はどの程度ですか?
A7. 吸水率は約2.0~2.5%(23℃、24時間)で、飽和吸水時には寸法が約0.3~0.5%程度膨張します。高精度が要求される用途では、設計段階でご相談ください。
Q8. MC801は金属との摺動部品に使用できますか?
A8. はい、優れた自己潤滑性を持つため、金属との摺動部品に最適です。無給油でも低摩擦を維持し、ギア・ベアリング・ガイドレールなど摺動用途で広く採用されています。
Q9. 加工精度はどの程度まで対応できますか?
A9. 標準で±0.05mm程度、部位・形状により±0.02mm程度まで対応可能です。吸水による寸法変化があるため、超高精度が必要な場合はご相談ください。
Q10. MC801の耐熱温度はどのくらいですか?
A10. 熱変形温度は150~160℃(1.82MPa荷重)、連続使用温度の推奨範囲は80~100℃程度です。高温環境での長期使用は変形やクリープが生じる可能性があります。
Q11. MC801はどのような薬品に耐性がありますか?
A11. 油脂類・ガソリン・軽油・アルコール・弱酸・弱アルカリに優れた耐性があります。濃硫酸・濃塩酸・強アルカリ・フェノール類には膨潤や劣化が生じます。使用環境の薬品については事前にご確認ください。
Q12. 図面がなくても加工を依頼できますか?
A12. 現物サンプルや手書きスケッチからでも対応可能です。当社でCAD図面作成(別途費用)を行い、形状確認後に製作を進めます。まずはお気軽にご相談ください。
お問い合わせから納品までの流れ
- お問い合わせ・図面支給 – メールフォームまたはお電話(0553-33-6927)でご相談ください。PDF図面・CADデータ・スケッチ・現物サンプルなどをご支給いただきます。
- 内容確認・技術検討 – 支給データを精査し、加工可能性・方法・所要時間を検討します。確認事項があればご連絡いたします。
- お見積書の作成と提出 – 加工費・材料費・納期を記載した見積書をメールまたはFAXでご提出します。
- ご注文書の受領 – ご注文書を受領した時点で正式受注となり、加工作業に着手します。
- 加工作業 – CAD/CAMでNCプログラムを作成し、マシニングセンターで各工程を寸法管理しながら実施します。
- 品質検査 – ノギス・マイクロメーターなどで寸法精度を確認し、図面指示通りの仕上がりを検証します。
- 梱包・納品 – 検査合格後に丁寧に梱包し、指定先へお届けします。配送方法・納品日時も柔軟に対応します。
まとめ
MC801樹脂は屋外環境での長期使用に最適化された耐候性MCナイロンです。紫外線・風雨にさらされる条件下でも優れた機械的強度と寸法安定性を維持し、標準グレード(MC901)では困難だった屋外用途に対応できる点が最大の強みです。
当社では3次元CADデータからの一貫加工と1個からの小ロット対応により、試作・開発段階から特注の精密加工部品まで短納期でお応えします。自己潤滑性・耐摩耗性・軽量性といった特性は、産業機械・屋外設備・建築土木など幅広い分野での金属代替として実績があります。
MC801加工に関するご質問・お見積り・技術的なご相談など、どのようなことでもお気軽にお問い合わせください。
電話でのお問い合わせは 0553-33-6927 まで








