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ABS樹脂3D加工品|5軸切削で複雑形状を高精度加工

- プラスチック加工品例 -

ABS樹脂3D加工品|5軸切削で複雑形状を高精度加工

ABS樹脂板材をもとに、3次元CADデータからCAMを作成し、同時5軸マシニングセンター複雑な3D形状高精度に切削加工した事例です。

この記事の要点

  1. ABS樹脂板材から、160.0×128.0×30.0mmの複雑な3D形状部品を切削加工した事例です。
  2. 3次元CADデータをもとにCAMを作成し、同時5軸制御マシニングセンターで高精度に切削加工しています。
  3. R11.5・R4・R3の曲面と、多種穴あけ・開口加工を含む複雑形状を一体加工しています。
  4. 加工は裏表2工程で行い、精度と変形抑制を両立するクランプ方法が重要なポイントです。
  5. 関連情報として、ABS樹脂切削加工事例3D加工事例5軸加工事例ABS樹脂の素材情報をご覧ください。
ABS樹脂|3D形状部品|同時5軸切削加工|160×128×30mm|表面全体
ABS樹脂の3D加工品を表側から撮影した全体写真です。曲面形状外形バランスが分かります。
ABS樹脂|3D形状部品|同時5軸切削加工|160×128×30mm|裏面全体
ABS樹脂の3D加工品を裏側から撮影した全体写真です。裏面形状開口部の配置を確認できます。
ABS樹脂|3D形状部品|同時5軸切削加工|裏面縁部拡大
裏面を上にした状態で、製品の縁部を拡大撮影した写真です。エッジ仕上がり切削面の状態が分かります。
表1:ABS樹脂3D加工品の代表仕様
項目 内容
素材 ABS樹脂(ナチュラル色)板材
外形寸法 160.0×128.0×30.0mm
加工内容 3D形状切削曲面加工多種穴あけ開口加工C1面取り
加工設備 同時5軸制御マシニングセンター
図面支給 3次元CADデータをもとに加工
仕上げ 切削加工
外観品質の要点 R11.5・R4・R3の曲面裏表2工程による高精度切削加工が特長

※ 上記は本加工事例の代表仕様です。詳細条件や数量により仕様・加工方法は調整いたします。

▶ これまで作った3D加工品は、3D加工事例一覧をご覧ください。

▶ これまで作った5軸加工品は、5軸加工事例一覧をご覧ください。


ABS樹脂3D加工品の5軸切削加工内容と方法

本製品は、ナチュラル色のABS樹脂板材同時5軸制御マシニングセンターで切削加工した特注部品です。外形寸法は縦160.0mm×横128.0mm×高さ30.0mmで、R11.5・R4・R3の曲面と多種穴あけを含む複雑形状を一体加工しています。

5軸切削加工の工程設計ポイント

  1. 図面確認・加工計画立案:支給された3次元CADデータを解析し、アンダーカット部位・曲面・穴位置精度を確認のうえ、加工順序とクランプ計画を策定しました。
  2. CAMプログラム生成:設計データから直接CAMプログラムを生成し、ABS樹脂の熱変形リスクを考慮した低切削熱の加工条件を設定しました。
  3. 外形加工(曲面仕上げ):フルバックカッターで平面を整え、フラットエンドミルで輪郭を形成後、ボールエンドミルでR11.5・R4・R3の曲面を滑らかに仕上げました。
  4. 裏表2工程の戦略的加工:当社独自のクランプ技術で変形を最小限に抑え、アンダーカット部分や複雑な内部構造も含めて一体加工しました。
  5. 多種穴あけ加工:φ1.4(16個)・φ1.8(16個)ほか各種丸穴と四角穴、計41箇所の穴・開口部を加工。一部にはC1面取り加工も施しました。
  6. 最終検査・出荷:各種測定機による寸法確認と外観検査を行い、図面公差をすべてクリアした製品のみ出荷しています。

ABS樹脂切削加工で注意すべきポイント

  • 切削熱への注意:ABS樹脂は熱可塑性のため、切削熱が蓄積すると変形・溶融が起きます。エアブローや適切な冷却を併用し、熱を逃がすことが重要です。
  • 工具の鋭利さを維持:刃先が鈍るとバリや白化が発生しやすくなります。超硬工具またはコーティングハイス工具を使用し、定期的な工具管理が不可欠です。
  • クランプ方法の工夫:過大なクランプ力は変形の原因になります。治具でワークを面支持し、力が均等に分散するよう設計することが重要です。
  • バリ・欠け対策:エッジ部分はバリが出やすいため、アップカット・ダウンカットを使い分け、仕上げは軽切削で行います。
  • 帯電・切り粉への配慮:ABS樹脂は帯電しやすく切り粉が加工面に付着しやすいため、こまめなエアブローが有効です。

本製品で使用したABS樹脂について

使用素材について

本製品にはナチュラル色(乳白色系)のABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)板材を使用しました。ABS樹脂は耐衝撃性・加工性・表面仕上がりのバランスに優れた汎用樹脂で、切削加工用の板材としても広く使用されています。本製品では、被削性・寸法安定性・表面仕上がりのバランスに優れる標準的なABS樹脂板材を採用しています。

詳しい特性や種類については、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン)の素材解説ページでご確認ください。

ABS樹脂の特性と優位性

ABS樹脂の5つの主な特徴

  • 機械的強度と靭性のバランス:引張・曲げ強度と耐衝撃性を兼ね備えた、バランスの良い汎用素材で、外装・筐体部品に広く採用されています。
  • 優れた切削加工性:被削性が高く複雑な3次元形状でも加工しやすいため、精密切削加工に特に適しています。
  • 塗装・メッキ・接着の容易さ:塗料密着性・メッキ適性・接着性がいずれも高く、後処理の自由度が広いのが大きな強みです。
  • 低コストと入手性の良さ:板材・パイプ・棒材など多様な形状で流通しており、コストパフォーマンスに優れます。
  • 低吸水性と寸法安定性:吸水率0.2-0.6重量%と低く、湿潤環境でも寸法変化が小さいため、精密部品としての信頼性が高い素材です。

ABS樹脂の主要特性(物性値)

ABS樹脂 主要物性値一覧

表2:ABS樹脂(一般用グレード)の代表的物性値 ※グレード・メーカー・試験条件により異なります
物性項目 単位 試験規格 代表値
比重(密度) g/cm3 ASTM D792 1.16-1.21
引張強さ MPa ASTM D638 23-55
引張弾性率 MPa ASTM D638 1,900-2,800
曲げ強さ MPa ASTM D790 66-96
アイゾット衝撃強さ(ノッチ付き) J/m ASTM D256 75-640
荷重たわみ温度(1.81 MPa) ASTM D648 88-107
連続使用温度(目安) -20~70
線膨張係数 ×10-5/℃ ASTM D696 6.5-9.5
吸水率 重量% ASTM D570 0.2-0.6
体積抵抗率 Ω・cm ASTM D257 1016

※ 耐衝撃グレード・ガラス繊維強化グレード等では値が大きく異なります。設計・選定の際は各メーカーのデータシートをご確認ください。

ABS樹脂・他樹脂素材・金属素材の比較・優位性

素材別 主要物性・特性 比較表

ABS樹脂(対象素材) 他の樹脂素材 金属素材
表3:ABS樹脂と主要素材の特性比較(参考値)
物性・特性 ABS樹脂 HDPE(高密度ポリエチレン) PP(ポリプロピレン) 硬質PVC(塩化ビニール) PA6(6ナイロン) A5052(Al合金) SUS304
比重 (g/cm3) 1.01-1.21
(グレードによる)
0.94-0.96 0.90-0.91 1.38-1.42 1.13-1.15 2.68 7.93
引張強さ (MPa) 23-55 22-38 25-40 40-60 65-80 175-290
(調質により異なる)
520-720
荷重たわみ温度 (℃)
1.81 MPa荷重
88-107 43-52 50-65 65-80 55-80
(乾燥時)
150以上 高温耐性
切削加工性
耐薬品性
(有機溶剤弱)

(吸水性あり)
塗装・メッキ対応
コスト指数 低-中 低-中 中-高
汎用性
切削加工事例 ABS樹脂切削加工事例 PE切削加工事例 PP切削加工事例 PVC切削加工事例 PA6切削加工事例

※ 各数値はJIS規格・各種技術資料を参照した参考値です。◎: 優れる / ○: 良好 / △: やや劣る。グレード・調質・試験条件により異なります。PA6の荷重たわみ温度は乾燥状態(無充填グレード)の参考値。A5052の引張強さはJIS H 4000による調質別範囲(O材:175 MPa程度、H32:約230 MPa、H34:約255-260 MPa)です。

比較表から見るABS樹脂の優位点

  • 加工性と後処理の組み合わせが最強クラス:切削加工性◎かつ塗装・メッキ対応も◎。HDPEやPPは塗装密着性が低く、この点でABS樹脂が際立って優位です。
  • HDPE・PPより高い耐熱性:荷重たわみ温度がHDPEやPPの約2倍近く、電子機器・産業機器の筐体など適度な耐熱性が必要な用途に適しています。
  • 金属より大幅に軽量・低コスト:Al合金の約40%、SUS304の約13%の重さで、加工費・材料費ともに低く、コストを抑えた試作・特注部品に最適です。
  • 複雑形状の切削加工に最適:本製品のような多種穴あけ・R曲面を含む特注部品でも、高精度に製作できます。
  • バランスの取れた汎用性:強度・加工性・コスト・後処理の4要素を高い水準で兼ね備え、用途を選ばない幅広い汎用性がABS樹脂最大の強みです。

ABS樹脂の長所と短所

ABS樹脂 長所・短所一覧

表4:ABS樹脂の長所・短所まとめ
長所(強み・特性) 短所(弱点・注意点)
  • 切削・成形加工がしやすい(被削性良好)
  • 耐衝撃性が高く、靭性に優れる
  • 塗装・メッキ・接着性が優秀
  • 表面の光沢・仕上がりが良い
  • 低コストで入手しやすい
  • 低吸水性で寸法安定性が良い
  • 連続使用温度が約70℃と低め(高温環境に不向き)
  • ケトン・エステル系などの有機溶剤に弱い
  • 紫外線に弱く、屋外長期使用では黄変・劣化しやすい
  • 耐候性が低いため、屋外使用には耐候グレードが必要
  • 金属と比べ強度・剛性が劣る

※ 性能はグレード・添加剤・使用環境により変わります。用途に合わせたグレード選定についてはお気軽にご相談ください。

ABS樹脂加工でよくあるトラブルと当社の対策

トラブル事例と対策一覧

表5:ABS樹脂切削加工でよくあるトラブルと当社の対策
トラブル 主な原因 当社の対策
熱変形・溶融 切削速度・送り速度が高すぎる、冷却不足 低切削熱条件の設定とエアブロー併用で熱蓄積を防止
バリ・欠け 工具摩耗、切削条件の不適切、送り方向 工具の定期交換と仕上げ切削での軽切削・切削方向の最適化
寸法精度の不安定 クランプ力による変形、熱膨張、切削応力 独自クランプ治具で面支持し、加工中の変形・振動を最小化
表面白化・スジ 切削速度不適、工具切れ味の低下 仕上げパスの切込み量を最適化し、工具摩耗を管理して鏡面に近い仕上げを実現
切り粉付着 帯電による静電吸着 エアブロー・除電ブローの活用で切り粉を都度除去し、加工精度を維持

※ 上記はよくある事例とその対策の概要です。形状・要求精度・数量によって最適な加工条件は異なります。

ABS樹脂加工でお困りの点やご不明な点があれば、まずはお気軽にご相談ください。当社エンジニアが最適な加工方法をご提案します。

当社のABS樹脂加工が活躍する分野

主な加工実績分野

  • 試作・開発分野:金型不要で1個からの小ロット生産に対応。外観・機能確認モデルや設計検証用の試作部品として多数の実績があります。
  • 産業機器・制御装置分野:センサーケース・制御ボックス・計測器筐体など、本製品のような特注精密加工部品の製作に対応しています。
  • 電子・電気機器分野:基板収納ケース・コネクタカバー・スイッチ周辺部品など、絶縁性と加工精度が必要な部品に採用されています。
  • 医療・研究機器分野:実験用治具・検体ホルダー・測定補助具など、寸法精度と清潔感のある外観が求められる部品製作に対応しています。

ABS樹脂切削加工に関するよくある質問(FAQ)

ABS樹脂の5軸切削加工や試作対応について、よくいただくご質問をまとめました。

Q1. ABS樹脂の切削加工に同時5軸マシニングセンターを使う理由は何ですか?

A1. 複雑な3次元形状を一度のセットアップで加工できるためです。3軸加工では届かないアンダーカット部分や曲面も、5軸制御なら最適な角度からアプローチでき、加工精度向上と工程数削減を同時に実現できます。

Q2. 本製品のように複雑な3次元形状でも、一体で切削加工できますか?

A2. はい、可能です。裏表2工程の戦略的加工と独自クランプ技術を組み合わせることで、アンダーカットや複雑な内部構造も含めて一体加工しています。

Q3. ABS樹脂の切削加工で使用する工具はどのようなものですか?

A3. 今回の加工ではフルバックカッター(正面フライス)・フラットエンドミル・ボールエンドミルを用途に応じて使い分けました。ABS樹脂は被削性が高く、超硬工具やコーティングハイス工具が一般的に使用されます。

Q4. 裏表2工程での加工とはどのような方法ですか?

A4. 表面(第1工程)を加工・固定後、ワークを反転させて裏面(第2工程)を加工する方法です。クランプ位置の設計が精度と変形防止の鍵であり、当社独自の治具により高精度な2工程加工を実現しています。

Q5. ABS樹脂の表面仕上がりはどの程度きれいになりますか?

A5. ABS樹脂はボールエンドミルによる仕上げ切削との相性が良く、カッターマークの無い、滑らかな美しい表面が得られます。塗装を加えればさらに高品質な外観になります。

Q6. ABS樹脂加工品に接着加工を行うことはできますか?

A6. はい、ABS樹脂は溶剤による接着加工が可能な素材です。接着は当社内で施工しておりますので、お気軽にご相談ください。

Q7. 納期はどのくらいかかりますか?

A7. 加工内容や数量により異なりますが、標準的な部品で5-7日程度です。試作品や緊急対応については、ご相談いただければ柔軟に対応いたします。

Q8. 小ロット・1個からでも特注加工の依頼はできますか?

A8. はい、1個からの小ロット生産に対応しています。試作・開発段階の検証用部品から継続的な少量発注まで、数量に関わらず対応いたします。

Q9. CAD図面はどのようなデータ形式で支給すればよいですか?

A9. 3次元CADデータ(IGES・STEP形式など)または2D図面(DXF・DWG形式など)に対応しています。データ形式についてご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。

Q10. ABS樹脂切削加工に適さない用途・環境はありますか?

A10. 連続使用温度が約70℃と比較的低いため高温環境には不向きです。また有機溶剤(ケトン・エステル類)や強酸に弱く、屋外での長期使用では紫外線劣化も起きやすいため注意が必要です。

Q11. 同じ部品を繰り返し発注することはできますか?

A11. はい、可能です。一度製作した製品の図面や加工データは、すべて保管しております。そのため、継続発注の際もスムーズに対応できます。

Q12. 品質管理はどのように行っていますか?

A12. 各種測定機(デジタルノギス・マイクロメーター等)による全寸法測定と目視外観検査を実施しています。お客様の図面寸法公差をすべて確認したうえで出荷しており、検査成績書の提出もご相談ください。

ご依頼から納品までの流れ

受注から出荷まで5ステップ

  1. お問い合わせ・図面支給:お図面(3次元CADデータ・2D図面等)をご支給いただき、加工内容・数量・納期をお伺いします。
  2. 見積書作成・提出:加工内容を確認のうえ、材料費・加工費を含めた見積書をご提出します。
  3. 注文書受領・着手:ご承認後、注文書をお送りください。加工スケジュールを確定し、着手します。
  4. 精密切削加工:CADデータからCAMプログラムを生成し、同時5軸制御マシニングセンターにて精密加工を実施します。
  5. 検査・納品:寸法測定と外観検査を経て、品質基準をクリアした製品を納品します。

まとめ

ABS樹脂は、切削加工性・耐衝撃性・後処理の自由度・コストパフォーマンスをバランス良く備えた素材です。本製品のような複雑な3D形状多種穴あけを含む特注部品でも、同時5軸制御マシニングセンターと当社独自のクランプ技術により高精度な切削加工を実現しています。1個からの小ロット生産に対応しており、試作から継続的な少量発注まで柔軟にお応えします。

ABS樹脂の切削加工・5軸加工でお困りのことがあれば、ぜひ当社にご相談ください。経験豊富なエンジニアが最適な加工方法をご提案します。

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