【拝見しますそのデザイン】プラスチックの魅力を活かす
MSN産経ニュース - 2008年8月3日
今年6月にキヤノンから出たコンパクトフォトプリンター「セルフィーCP770」は、最近の家電新製品の中でもぐっと目を引いた。楕円(だえん)を描くバスケット形といい、新鮮卵みたいな黄色といい、かなり斬新。加えて、これは家電としてすごく正しいあり方なのではないか、という気持ちにさせる。
若干話がそれるが、私が産経新聞に初めて原稿を書いたのは平成18年3月12日で、このときは「豆腐的」な、要は白くて四角い、デザインが増えていることについて書いた。大体12年以降からだろうか、音響、映像、パソコン周辺機器はモノトーン+直線的な、おおざっぱに言ってしまえば無印良品的なデザインが増えていき、それから約2年と半年、いつの間にかそれが主流になっていた。
確かに豆腐的なデザインは、あれこれそろえて並べても、お互いを邪魔せず、落ち着いてみえる便利なものではある。が、果たしてそれが一番よい結果なのか、というとそうではない場合も多々ある。
セルフィーCP770は万人に向けられたものではない。ターゲットは小さな子供のいる(どちらかといえば機械に弱い)お母さん。一緒に使おう、というコンセプトで作られたもので、子供でも見てすぐ分かるような工夫がいたるところに隠れている。
まずは玩具を思わせるような、かつ、お片づけもできるバスケット形と、男児、女児どちらにも好かれるような元気のよい色。細かいところでは、バスケットを開けて本体を取り出す作業を促すため、普段見慣れたお弁当箱を想起させる形状で、子供がやりたがるであろうロックと印刷ボタンには共通で緑を使っている。また、バスケットはぶつかったり踏んだりしても割れにくく、割れても鋭い破片になりにくいポリプロピレンを使うなど、数えていけばきりがない。
家電がハイテク化、複雑化すればするほど、使いやすく見てすぐ分かるデザインが重要になってくるはず。プラスチックという素材の大きな魅力は、形や色を自由に作れるところで、分かりやすいデザインを作るのには最適な素材であるのに、実際、その要素が活用されている家電の例はまだ少ない。
ターゲットを絞ったことで、プラスチック素材の魅力を十二分に活用したセルフィーCP770は、目的がきちんとあるべきところに着地した希有(けう)なデザイン例だと思う。