【明日への布石】(978)岩谷産業(5)素材の加工に価値
フジサンケイ ビジネスアイ - 2008年8月1日
■次世代とニッチにこだわり
「“価値創造のイワタニ”を担っている」
マテリアル本部副本部長の堀口勇一(58)は、現在、岩谷産業が進める3カ年中期経営計画『PLAN08』の同本部のビジョンを説明する。
同本部は、主に金属関係や合成樹脂、鉱物資源などの原料を扱うセクションで2002年4月1日に発足。機能樹脂、セラミックスなどを扱う資源・新素材、金属、電子マテリアルの4部で構成されている。PLAN08では、計画最終年度の08年度連結売上高7200億円を目指し、マテリアル本部は単体ベースの売上高で約764億円を目標に掲げている。
同本部には本社(本部)を中心に32の子会社がある。本社は商社機能を担い、子会社が加工や製造を行うスタイルだ。32社のうち海外は19社、国内13社。海外は中国が中心となっている。駐在員も本部から世界各地に26人派遣し、多い地域では中国に12人、タイに6人を派遣している。
≪即納体制に信頼≫
その中国で展開しているのが素材の供給から加工までをカバーした高付加価値ビジネスだ。単なる素材供給だけでなく、顧客の求める形に素材を加工することで付加価値を提供する。
例えば広東省の「中山岩谷」。同社のある広州地域はデジカメや携帯電話、パソコンなどの電子機器の製造クラスター(産業集積地)となっている。こうした機器に使われる金属、とくにステンレス部品については単なる素材調達だけでなく、スリット加工をして部品にし、即納できる体制を整えている。
このビジネスモデル定着には1997年から着手。「現在、広州のある華南地区の日系メーカー中ではトップシェアを確保している」(尾平野哲也・電子マテリアル部長)という。同様の事業は03年から華東地区の「蘇州金属」でも展開されている。
4年前から蘇州の「蘇州ISR」で、携帯電話などの部品「フィルムスリット」にもこのビジネスモデルを適用しはじめた。クリーンルームの中で加工を行い顧客に納めている。昨年4月からは、中山岩谷でもフィルムスリットを手掛けるようになった。
同本部副本部長の宮代正明(55)が説明するように「一般商社のように問屋的に素材を右から左へ流す事業をしていると、なかなか大手商社には太刀打ちできない」という考えからスタートしたビジネスモデルだが、顧客の部品規格にきめ細かく対応する点が支持され事業は好調に推移している。
タイのバンコクでも同じビジネスモデルを展開している。「バンコク アイ・トーア」(BIT)は当初、タイに進出した日系エアコンメーカー向けに室外機に使われるファンガードだけを製造していた。
95年にステンレスの電解研磨ライン、97年に自動スポット溶接機、2000年には3次元自動ワイヤベンダーを導入。いまは食器洗浄機に使われるかごやキッチン用品などを製造し、競争力のあるワイヤ加工メーカーに育った。
≪今後はBRICs≫
今後、海外事業で注力する地域はBRICsだ。宮代は「なかでもインドをターゲットにしている」と打ち明ける。
7月22日、デリーの南にある振興工業地帯に駐在員事務所を開設した。インドでも、中国のように現地加工を伴う高付加価値ビジネス展開を志向し、当面はインドの各種規制や法令、税制などをにらみながら市場調査を行っていく計画だ。
一方、マテリアル本部は西豪州でジルコン(酸化ジルコニウム)の原料となる鉱物資源「ミネラルサンド」事業も推進している。ジルコンはシリコンウエハーの表面磨き剤の原料などに使われ、今後需要が見込める。01年、現地に鉱山を保有しミネラルサンドの採掘を開始。採掘されたミネラルサンドを原料にジルコンの溶融や粉砕の事業を展開し、ミネラルサンド事業をさらに伸ばしたいとしている。
堀口は、マテリアル本部の成長のキーワードは『アドバンス&ニッチ』と指摘する。海外市場で大手商社が手掛けない分野に、いかに高付加価値サービスを提供できるかにこだわる方針だ。=敬称略(香西広豊)
【記者の目】
創業以来、「世の中に必要なもの」を追求し「世の中に必要とされる会社」を目指してきた岩谷産業。総合エネルギー企業として主力のLPガスをはじめ、LNG(液化天然ガス)や水素など幅広いエネルギーを扱うことは、顧客のエネルギーニーズが多様化する現状では大きな強みだ。
とくに燃料電池などに利用されるクリーンエネルギー、水素にいち早く取り組んだ先見性は今後成長する可能性が非常に高い。“水素のイワタニ”としての存在感を確固たるものにできるか、注目したい。